株価下落期間には敬遠されるNASDAQ100ですが、いざ上昇局面になると一転して資産成長の強力な原動力になってくれるので人気が出ます。
NASDAQ100にレバレッジをかけたレバナスは、米国ETF“QLD”の日本ver.として人気を博し、投資初心者も(あまり詳しく知らずに。。。)投資をしているようです。
そのレバレッジ倍率は2倍ですが、このトリプルマルチアイは最大3倍です。
3倍だとTQQQに相当しますが、それだけではなくリスクを軽減するために下落局面ではレバレッジを下げる方策を取るとされます。
この記事では、NASDAQ100トリプル(マルチアイ搭載)がどんなものなのかを紹介し、その投資対象としての価値をFIRE済み投資家の目線で解説します。
投資の本質が詰まった話になりますので、是非参考にして下さい。
- 投資家・個人事業主・医学博士
- 投資歴15年 (学生時代から)
- レバナス/USA360/3倍ETFをメインに積立中
- 地銀→野村證券→ネット証券
- FIRE済み:好きで働いてます
NASDAQ100トリプル(マルチアイ搭載)は何者?
2021年に設定された、まだ歴史の浅い投資信託です。
概要は以下の表の通りです。
NASDAQ100トリプル(マルチアイ搭載) | |
---|---|
運用会社 | 大和アセットマネジメント |
連動インデックス | NASDAQ100 |
レバレッジ倍率 | 最大3倍 |
経費率 | 1.4075% |
設定日 | 2021.03.26 |
償還日 | 2026.03.25(予定) |
資産総額 | 22.3億円 |
楽天証券や松井証券など7つの証券会社で購入が可能です(2022年5月6日時点)。
この後で簡単に要約しますが、正確には以下のように表現される特徴を持つ投資信託です。
原則として、米国の株価指数先物取引の組入比率が信託財産の純資産総額の300%程度となるように買い建てつつ、市場局面がリスク回避局面と判定される場合、基準価額の下 落リスクを抑制するために、株価指数先物取引の組入比率を調整します。
交付目論見書より
大和アセットマネジメント株式会社の独自モデルに基づき、市場局面を判定します。
米国の株価指数先物取引の組入比率は、下限を信託財産の純資産総額の-30%程度とします。-30%とは、純資産総額の30%の株価指数先物取引を売り建てることを意味します。
為替変動による影響は、損益部分に限定されます。
つまり、
また、マルチアイというのは以下の通りです。
複数(マルチ)のリスク関連指標を用いて市場局面を判定する大和アセットマネジメント株式会社独自のモデルです。 市場局面がリスク回避的と判定される場合には、米国の株価指数先物取引の投資比率を調整することによって、基準価額の下落リスクの抑制をめざします。
交付目論見書より
つまり、
大和アセットマネジメントがやりたい事は理解は出来ます。
NASDAQ100が上がっている時はレバレッジを3倍にし、下がっている時はレバレッジを下げたり、場合によりベア型にシフトすることも検討する。
では次は、実際にそのマルチアイに基づいてレバレッジ倍率が変更された場面を見てみましょう。
マルチアイはうまく機能しない
多角的な監視の目はうまく機能するのでしょうか。
2022年1月25日、初めてレバレッジ倍率が3倍から1.5倍に下げられました。
その前日にロシアがウクライナに侵攻したことで、市場に如実に影響が出たことが契機です。
その後、株価が戻り始めたので2022年2月3日にレバレッジを3倍に戻しました。
しかしその後の急落を受けてまた1.5倍に戻し、そんなことを繰り返しながら2022年2月16日に0.6倍に下げました。
その推移は以下の通りです。
上段のグラフはTQQQを想定したものとの比較と思えば良いでしょう。
黒いラインがマルチアイで、青いラインが仮想TQQQです。
下段はマルチアイのレバレッジ倍率の推移を示しています。
いかがでしょうか。
当然といえば当然の結果です。
市場の動きを予め予測することなど出来ませんから、『いつから上がるか下がるか』など分かろうはずもありません。
そして、挙句の果てにもう市場がよく読めないので、保守的に2月中旬からはレバレッジ下げておこう、的な。。。
どうしてこんなことになってしまうのか、実際のところマルチアイは儲かるのか、次にそのことについて解説します。
それは投資を行うに際して、私がもっとも大事なことと考えるポイントでもあります。
マルチアイは儲からない
上に引用した公式資料にあるチャートからも明らかかもしれませんが。。。
もしこれで儲かるなら、皆んなこれに投資すれば良いですよね。
レバレッジ3倍で、リスクだけ軽減出来るなどという都合の良いものがあるのなら、ウォーレン・バフェットもジム・ロジャーズもこれに投資するのではないでしょうか。
結論として、人為的にリスクを読むことは不可能で、そのような謳い文句は信用すべきではないと考えます。
なぜなら、そもそも株価の動きは誰にも予想出来ず、インデックスにアクティブファンドが勝てないのと同じだからです。
リスクが高そうな時にはレバレッジを下げる、などということがうまく機能するでしょうか。
いいえ、上手くいくはずがありません。
実際にそうなってしまっています。
そんな失敗例は他にもあります。
例えばコロナショックにビビって3倍レバレッジを2倍レバレッジに下げ、その後3倍に戻す機を逸した典型例がERXです。
コロナショック後から投資をしている場合には大きな問題にはなりませんが、コロナショック以前に持っていた分の含み損を取り返すのは極めて難しくなってしまいました。
哀れとしか言いようがありません。。。
そんなことを言ってはおしまいだ、と思うかもしれません。
しかしこれが現実であり、データからも明らかな事実です。
下がったら買い、上がったら売る、これを間違えずに続けられるならアクティブファンドはもっともっと儲かるはずです。
そして誰もがウォーレン・バフェットになれたことでしょう。
しかし現実にはそうはなっていません。
8割9割のファンドマネージャーは、ただ流れに身を任せたインデックスに勝てないのだという事実を認めなければなりません。
個別株がインデックス投資に敵わないのも同じことです。
市場を読むことなど出来ないのです。
もし出来るという方がこの記事を読まれているのであれば、マルチアイなどに投資せずにぜひご自身で投資をすることをお勧めします。
まとめ
NASDAQ100トリプル(マルチアイ搭載)を紹介しました。
この投資信託のレバレッジの最大倍率である3倍の商品については以下の記事にまとめてあります。
マルチアイは独自のリスク分析に基づいてレバレッジを変動させるところがポイントですが、紹介した通りそのレバレッジ調節は至難の技です。
理想的なレバレッジを維持出来る技術や予測モデルがあるのなら、それは全ての投資家にお勧めしたいですし私もそんなものがあればとても魅力的だなと思います。
しかし、現実はそんなに甘いものではありません。
NASDAQ100トリプル(マルチアイ搭載)はそのことを知らしめてくれる反面教師としてその成績を見守るのが一番ではないか、と私は個人的には思います。
投資する際には必ず公式HPなどで最新の情報をチェックし、自己責任・自己判断で行うようにしましょう。
最後に、NASDAQ100トリプル(マルチアイ搭載)を運用販売する大和アセットマネジメント社には、レバレッジを2倍に固定した商品『iFreeレバレッジNASDAQ100』があります。
よく大暴落が来たときのリスクが取り沙汰されますが、その点については以下の記事を参考にされてください。
レバナスはNASDAQ100が上がろうが下がろうが常にレバレッジ2倍です。
NASDAQ100トリプル(マルチアイ搭載)と違って完全に機械的に2倍のレバレッジで運用しますので、上昇に転じた瞬間も逃しませんし、手数料も低くなっています。
いずれにしろレバレッジ投資はハイリスクです。
最低限の知識はつけてから手を出しましょう。
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