楽天レバナスこと、楽天レバレッジNASDAQ-100の登場が2021年10月にアナウンスされて、ますますレバレッジ投資信託への注目度が上がってきました。
そこで本稿では、レバレッジ投資信託に関心を寄せながらも、それらの違いについていまいち理解出来ずに購入を躊躇している方々の悩みを解決すべく、比較すべき主な点のみに焦点を絞って紹介します。
楽天レバナスの登場とiFreeレバレッジNASDAQ100との比較については以下の記事でまとめていますので参考にされて下さい。
レバレッジ投資信託の比較
償還期限
レバレッジを活かすには長期に積み立てることが一つの重要なポイントになることは、冒頭で紹介した楽天レバナス登場の記事以外にも以下の記事で紹介してきました。
複利効果による資産の増加をしっかりイメージして頂くことが大切だからです。
つまり、数十年に渡って運用を続けていくことを前提として、何処かで強制的に打ち切られ、売却しなければならなくなることは避けたいわけです。
これは複利効果を狙う上でも重要ですが、それ以上に価額変動のある商品について大暴落時に売却せざるを得ない状況に追い込まれることのリスクが恐ろしいということです。
加えて、長期的な資産形成を行おうと思っていても、途中で強制的に解約されて課税されるなども起こり得ます。
そこで注意して見て頂きたい項目が償還期限です。
多くのレバレッジ投資信託に償還期限が設定されていますので、長く運用したくても出来ない場合があります。
一方無期限と記載されているものも一定の条件を満たした場合には償還となるなど、購入や積立設定を行う場合には目論見書をしっかり確認しておきましょう。
償還などの言葉の意味がよく分からないという方は、以下の記事に基礎知識をまとめていますので参考にされて下さい。
逓減リスクの比較(インデックスと倍率の複合要因)
レバレッジ投資の基本リスクである逓減について、改めて見てみましょう。
投資信託におけるレバレッジは価額変動割合をインデックスの○倍にする、というものです。
従って、もしレバレッジ倍率が3倍であれば上昇するときは3倍に上昇する一方、下落するときも3倍下落します。
レバレッジ倍率ごとの想定される変動イメージを下のグラフに示します。
イメージしやすくするために極端な例も入れてあります。
元となるインデックスが10%の変動を繰り返す場合でのシミュレーションです。
現実には毎日10%も上下動を繰り返すような場面は歴史的にもありませんし、レバレッジ9倍の投資信託も存在していません。
文字による説明が不要な方はグラフに目を移して下さい。
『逓減』とは:
以下のグラフは全体的に右肩下がりになっていますが、これはインデックスが一定の割合で周期的に変動する状況のシミュレーションになっているためです。例えば1日目に100円だったものが10%上昇して110円になったとしましょう。10円の値上がりです。ところが次の日に10%下落すると110円の10%ですから11円の値下がりとなります。これで99円になり、10%の上昇と10%の下落が1度ずつ訪れた結果、元の価額100円よりも1円少ない状態になってしまいました。ここにもしレバレッジがかかっていると、2倍の場合は10%上昇するときに20%の上昇、10%下落する時に20%の下落となり、100円→120円→96円と、より基準価額からの乖離が大きくなることが分かります。
このように、インデックスの価額変動が一定の周期を持って一定範囲内を上下し続けるような相場が続く場合(ボックス相場、レンジ相場とも呼ばれます)、結果として資産額は目減りしていき、レバレッジ倍率が高いほどその傾向が顕著に現れることになります。
これこそが逓減リスクと呼ばれるものです。
一定の上下動の繰り返しでなくても、一括で購入した直後に大暴落が訪れた後にゆっくり上昇する場合などについてもそのレバレッジの効いた大きな下落を取り戻すにはより長い時間がかかります。
以下は20%の暴落が3日続いた後、10%の上昇が16日間続いた場合のシミュレーションです。
レバレッジ倍率が高いほど大きな下落を受け、そこからの立ち上がりに勢いがつくまで時間を要することが分かると思います。
実際にはサーキットブレーカーと呼ばれる大暴落時の取引停止制度があるためこのような凄まじい大暴落は起こりませんが、NASDAQではS&P500の下落幅が20%に達するまでは段階的な措置となるため20%の下落でシミュレーションしてみました。
※ 仮にこの世に存在しないレバレッジ9倍で計算すると資産が無くなりますので、計算から除外しています。
レバレッジ倍率が大きいほど下落のダメージは大きく、立ち直り、巻き返すのに時間を要する様子が視覚的に分かると思います。
相場の動き次第では大きなレバレッジは逆効果となり得る、諸刃の剣の様相を呈しています。
インデックスの比較
レバレッジを掛けて運用する価値がどれほどあるのかは、重要な観点です。
逓減リスクを見れば明らかですが、インデックスが長期的にみて右肩上がりであることが極めて重要です。
2000年以降の20年間をみてみると、米国株式市場のインデックスはS&P500もNASDAQ100もダウ平均も全て右肩上がりになっているのが分かると思います。
一方で、日本株はどうでしょうか。
バブル崩壊後に長らく停滞を続け、2020年のコロナショック後の立ち上がりは良かったもののその後はまた停滞と、伸び悩む様子がはっきりと見て取れます。
以下に日本株と米国株にレバレッジをかけた投資信託のチャートを載せています。
日本株に4.3倍ものレバレッジを掛けた楽天日本株4.3倍ブルは、2021年3月にピークを迎え、その後は冴えない状態が続いています(オレンジ線)。
日本株にレバレッジ2倍の場合には低迷しているだけ、とさえ言えるでしょう(青線)。
最低限の情報収集と学習は欠かせませんので、レバレッジ投資を始める前に是非その基本に立ち返ってみて下さい。
そうすれば実は初心者にもお勧めできる投資手法である、という側面も見えてきます。
手数料(信託報酬)の比較
投資信託はファンドに運用を委託しますので手数料が発生します。
レバレッジ投資信託は原則としてインデックス先物取引の買い玉総額が信託財産総額の○倍になるように調整する運用方針ですので、インデックス投資信託に分類されます。
しかしその手間はただインデックスと同様のポートフォリオで現物を保有しているのと比べれば大きいですので、信託報酬はそれなりです。
NASDAQ100を指標とするレバレッジ投資信託の比較はこれも冒頭で紹介した記事『レバナス比較』にありますが、0.77〜0.99%となっています。
大和アセットマネジメント社のレバレッジを利用しないインデックス商品、例えばiFree S&P500インデックスの信託報酬は0.2475%ですし、現在では信託報酬が0.1%を切る商品もあることを考えるとやや高めです。
ただ、それが高いか安いかはこの数字だけ見ていても判断出来ません。
ハンバーガーよりビックマックの方が高いのは当たり前です。
主なレバレッジ投資信託の信託報酬を以下にまとめました。
中には2023年には償還されてしまうものもありますが、いずれも2022年5月時点でまだ購入可能なものになります。
信託報酬は低い方から高い方へ青から赤にグラデーションをつけています。
新登場の楽天レバナスの信託報酬の低さが際立っています。
ただこの差がどれ程の差を生むのかについては、実質的にはその影響はかなり限定的です。
レバレッジ商品でハイパフォーマンスな場合は、1%程度までに落ち着いてくれていればそれほど気にするレベルではなのかなと思います。
レバレッジ倍率の比較
逓減リスク、複利効果のバランスを考えると、最適なレバレッジ倍率はどの程度になるでしょうか。
これはリスク許容度によって考え方が大きく変わるところではありますが、個人的には2倍程度が良いのではないかと考えています。
理由は、米国インデックス、特にNASDAQ100のように長期的に右肩上がりのインデックスの場合には2倍でも極めて大きなリターンが得られていることと、不測の暴落に対して余りに大きなリスクは取れないと考えるためです。
もちろん、コロナショック後の1年間のような急激な成長が続くのであれば3倍以上のレバレッジによる恩恵は計り知れませんが、いつ巨大な逓減リスクの悪影響を被るかも分からないわけですから。
S&P500に4倍のレバレッジをかける投資信託が登場した際に、そのことを詳しく解説していますので参考にされて下さい。
試しに2020年3月からのおよそ1年半で、日本株を対象とした4つの投資信託の成績を見比べてみましょう。
好調な期間(2021年3月まで)においてはレバレッジ倍率が大きい方が有利ですので、4.3倍の投資信託(オレンジ線)がトップとなりました。
3倍(赤線)と2倍(青線)も伸びは良いものの、4.3倍には劣る成績となっています。
しかしながら、2021年3月以降についてはどうでしょうか。
特に2021年9月までの期間に注目すると、レバレッジの掛かっていない投資信託(緑線)は横ばいであるのに対して、レバレッジ倍率が高い投資信託ほど右肩下がりになっています。
ボックス相場が訪れたことによる逓減リスクが強く発揮されたことがよく分かります。
相場が好調なら大きなレバレッジを掛けたくなるのは心情としては良く分かりますが、ボックス相場や下落局面が訪れることも意識しておかなければなりません。
終わりに
見てきたように、レバレッジ投資信託を選ぶ際には様々なファクターを加味しなければなりません。
本稿の結論は、
- 長期的に成長が期待されるインデックス
- 償還期限なし
- 信託報酬1%未満
- レバレッジ倍率2倍
の全てを満たす投資信託が優秀な投資信託である、ということになります。
その筆頭がレバナスシリーズに当たります。
投資はあくまで自己責任ですので、これは私の一意見に過ぎませんが、レバナスを長期的に積み立てることで資産を大きく成長させることが期待出来るものと考えられます。
なおレバレッジ投資信託は楽天証券等のオンライン証券会社にて幅広く取り扱われていますので、先ずは見比べてみると面白いかもしれません。
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