公益事業セクターは、米国市場を大きく11のセクターに分けた内の一つです。
中でも公益事業セクターは、S&P500に占める割合こそ多くはありませんが、電気やガス、水道といったインフラ整備事業に直結するセクターです。
人が生活している限りは決してなくなることは無く、また一度作ったら終わりでは無く長期的にメンテナンスや再整備が必要になるセクターです。
つまり、景気の良し悪しに関わらず必要不可欠な事業ですので、安定した運用成績を期待出来ます。
この記事で紹介しますが、事実、過去15年以上のスパンで見てもS&P500よりも安定したパフォーマンスを見せてきました。
そこで本稿では、公益事業セクターに集中投資することが可能な米国ETF3種を取り上げ、その運用成績や積立投資を行った場合のバックテストを紹介します。
投資信託ではなかなか対応出来ない投資手法です、ぜひ投資判断の参考にされて下さい。
- 投資家・個人事業主・医学博士
- 投資歴15年 (学生時代から)
- レバナス/USA360/3倍ETFをメインに積立中
- 地銀→野村證券→ネット証券
- FIRE済み:好きで働いてます
公益事業セクターは今後儲かるのか
インフラに関わるセクターですので、不況に強いことは冒頭で紹介した通りです。
2022年現在、決して景気が上向いている状況とは言えず、新型コロナの収束もまだ遠い中でロシアのウクライナ侵攻が世界経済に大きな負の影響を与えています。
世界中を巻き込んでインフレが進み、物流への影響も強く、米国経済も必ずしも安泰とは言えない状況になりつつある様相です。
そんな中でも、インフラの整備は絶対に欠かすことが出来ません。
それどころか、2021年に誕生したバイデン政権はインフラへの巨額の投資を宣言しています。
インフラ法案と呼ばれる100年に一度の大型(2兆ドル)投資を8年かけて行う計画です。
とんでもない規模の計画で、The American Jobs Plan (米国雇用計画)と銘打たれた巨額の事業になります。
電気自動車の普及促進のためのEV用充電ステーションだけで1,740億ドルにも登ります。
テスラがさらに大きな躍進を遂げるキッカケにもなるかもしれません。
公益事業に直結する計画としては、クリーンエネルギー関連に1,000億ドル、学校整備に1,000億ドルなど、とにかく桁違いの投資計画です。
但し、先にも書きましたが、この巨大事業をバイデン大統領が掲げたのは2021年のことです。
世界情勢はその後大きく不安定になり、この米国雇用計画を支える法人税の増税を始め、どれだけ目論見通りに進むのかは未知数です。
あくまでも公益事業に大きな投資をする計画がある、ということを念頭に市場を注視するようにしましょう。
次は実際に公益事業セクターに投資をする具体的な商品を紹介します。
VPU、XLU、JXI:公益事業セクターETF
では、公益事業セクターに投資をするにはどうすれば良いでしょうか。
残念ながら国内には米国公益事業セクターに集中投資が出来る投資信託は存在していません(2022年4月時点)。
投資信託とETFの違いは以下の記事にまとめていますので参考にされて下さい。
テーマ型ETFを使って投資する
代表的なETFは以下の3つになります。
- VPU:Vanguard Utilities Index Fund ETF
- XLU:Utilities Select Sector SPDR Fund
- JXI:iShares Global Utilities ETF
それぞれの特徴は以下の通りです。
VPU | XLU | JXI | |
---|---|---|---|
運用会社 | Vanguard | State Street | BlackRock |
設定日 | 2004年1月30日 | 1996年12月16日 | 2006年9月21日 |
資産総額 | 64億9,500万ドル | 155億3,100万ドル | 1億9,954万ドル |
経費率 | 0.10% | 0.10% | 0.43% |
保有銘柄数 | 66 | 28 | 63 |
世界3大運用会社がそれぞれ設定しているETFで、XLUだけは組み入れ銘柄数が少なめですが、構成比率上位の顔触れには大きな違いはありません。
いずれの商品とも15年以上の運用実績を有し、VPUとXLUは経費率も極めて低く良心的です。
XLUは運用資産が155億ドルと、投資信託に比べれば大型です。
一方でJXIは2億ドル程度とそれほどの規模ではありません。
運用成績に与える影響は組み入れ銘柄数というよりはむしろ経費率の違いと、JXIには米国企業以外の銘柄が組み入れられていることの方が大きいようです。
過去の運用成績を比べてみると以下の通りです。
15年以上にわたるチャートから分かることは、
- 公益事業セクターの値動きはS&P500より穏やか
- S&P500と一致しない値動きをする場合がある
- JXIの一人負け
日本ではコロナショック後に急速に投資をする方が増えてきたこともあり、特に投資初心者はコロナショックからの立ち上がり期間の印象が強いようです。
そのため公益事業セクターは『収益性が悪いセクター』と捉えてしまいがちです。
しかし長い目で見ればS&P500と同等以上のパフォーマンスである期間も長く、魅力が無いわけでは決してないセクターだと思います。
トータルで見た年間平均リターンは、VPUとXLUでは8.5%を超えています。
10%を超えるS&P500には及びませんが、逆に最大下落率で見るとS&P500はリーマンショックで50%以上も下げている一方でVPU、XLUは40%以内に抑えられています。
リーマンショックはS&P500にとっても公益事業にとっても大きな暴落には変わりありませんが、中でも下落率が小さく抑えられていることは、それだけ狼狽売りのリスクも抑えてくれることでしょう。
公益事業セクターETFの長期積み立て
もしこの期間に積立を続けていたらどうなっていたでしょうか。
資産額の推移は以下の通りです。
対数表示だと差が分かりにくいので、Linear表示も合わせて掲載しています。
全体の印象は価格推移と同様で、コロナショック以前のパフォーマンスは公益事業セクターも悪くありません。
それでもやはりJXIのパフォーマンスはイマイチで、公益事業セクターへの投資はVPUかXLUが良さそうに見えます。
まとめ
米国公益事業セクターへ投資する方法と、その運用成績について紹介しました。
チャートは全てPortfolio Visualizerを用いて作成しました。
S&P500よりマイルドな値動きは、より保守的な投資を好む方にとっては特に適しているかもしれません。
景気敏感株と言われる素材セクターのような銘柄群とは対照的に、景気に左右されにくい特徴があります。
大きな上昇局面では強みを発揮しにくいかもしれませんが、長期的に大暴落するリスクが相対的に低いことも魅力の一つと言えます。
また、冒頭触れた通り2020年代は同セクターに巨額の投資が計画されています。
だからと言って暴騰するものでもありませんが、継続的に成長していくセクターであることが期待されます。
長期に積み立てる際に、より多めに公共事業セクターに投資したいと考える方は、S&P500や全世界株などに連動するETFに加えて、ここで紹介した公益事業ETFを組み合わせることが良いかもしれません。
あまり馴染みのないセクターかもしれませんが、その特徴を知った上でポートフォリオの構築に活かしましょう。
投資は自己責任で、自己判断で行いましょう。
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