AIはなぜ水を使う?データセンターの水消費・WUEと関連株の見方

AIと水消費:データセンターの冷却、WUE、投資判断のイメージ

AIに質問をすると、水を大量に使う。そんな話を聞いて、「パソコンの向こうで何が起きているのだろう」と思ったことはないでしょうか。

「質問を何十回かするとペットボトル1本分」という説明がある一方で、GoogleはGeminiのテキスト質問について、1回あたり0.26mLという数字を公表しています。かなり違います。どちらかが単純に間違っているのでしょうか。

比べているAI、時期、計算に含めた範囲が違えば、数字は変わります。ここを確かめずに「AIは水を使い過ぎる」「もう水の問題は解決した」と判断すると、どちらも早とちりになります。

私は当ブログで、半導体やAI向け設備投資を追ってきました。水の問題も、環境への配慮だけで終わる話ではありません。工場やデータセンターを予定どおり動かせるか。設備費と運営費はどちらに増えるのか。投資を考えるうえでも、確認しておきたい話です。

この記事では、AIデータセンターが水を使う仕組み、WUEの読み方、仮定を置いた計算、関連企業を見る際の注意点を整理します。電力側の話は、AIデータセンターの電力需要とPUEの記事と合わせるとつながります。

先に押さえたい3点

  • 冷却水、発電に伴う水、機器製造の水を分ける。
  • 「液冷」「水使用ゼロ」「WUE改善」は、それぞれ意味が違う。
  • 1回の使用量が減っても、利用回数が増えれば総量は増え得る。

資料確認:2026年10月16日。企業の公表値は対象期間・対象施設の範囲を付記し、筆者の仮定計算と分けています。アイキャッチはAIによる説明用イメージで、実在施設の写真ではありません。

広告

目次

AIはなぜ水を使う?データセンターの外も含めて考える

① サーバーの熱を外へ逃がすための水

AIを動かすサーバーには電気が流れ、熱が出ます。計算を続けるには、その熱を外へ逃がさなければなりません。水を蒸発させて熱を取り除く冷却設備では、蒸発した分などを補う必要があります。

ここで間違えやすいのが、配管の中を回っている水の量と、外から新しく補充する水の量です。同じ水を何度も循環させるなら、その循環量を毎回の「消費」として足すのは適切ではありません。

② 電気を作る発電所でも水を使う

データセンターが直接使う水を減らしても、電気を作る過程で使う水は別に残り得ます。どの発電設備から、どの程度の電気を受け取るかで、この部分は変わります。

米国のBerkeley Labの2024年報告は、2023年の米国データセンターについて、直接の水消費を約660億L、電力供給に伴う間接的な水消費を約8,000億Lと推計しています。AI専用施設だけの数字ではなく、2023年を対象としたモデル推計です。現在の個別施設にそのまま当てはめる数字ではありませんが、敷地の外を無視できないことは分かります。出典:Berkeley Lab、2024年報告

③ 半導体やサーバーを作る段階の水

機器を動かす前には製造があります。半導体の製造などに伴う水使用は、稼働中の冷却水とは別の項目です。同じサーバーを何年間使うか、どれだけ仕事を処理するかによって、1回の処理へ割り当てる製造負担も変わります。

この3つを分ける整理は、Li氏らの論文(2025年改訂版)でも示されています。以下の計算では、範囲を明確にするため、まず①の直接水消費だけを扱います。

AIの水使用を施設冷却、電力供給、機器製造に分けた図
図1:水の集計範囲を分けるための筆者作図。USGSとLi氏らの2025年改訂論文を基に整理。数値の比較図ではありません。

「取水量」と「水消費量」は同じではない

水に関する発表では、withdrawal(取水)とconsumption(消費)が混在します。取水は水源から取り出す量。消費は、蒸発などによって、その場で再び使える水として戻らない部分を指します。USGSの説明でも区別されています。

例えば、100Lを取り入れ、同じ地域へ80Lを戻す簡単な例なら、差の20Lを消費として考えます。ただし、実際の環境負荷は水質、排水先、季節、流域の状況にも左右されます。「80L戻したから問題なし」とまでは言えません。

水の数字を比較する前の確認表
見る項目確かめること
量の定義取水か消費か。循環する水量と混同していないか。
水源飲料水、地下水、河川水、再生水のどれか。
場所と時期流域はどこか。渇水期・暑い日の負荷はどうか。
集計範囲冷却だけか。発電や機器製造も含むのか。
数字の性質実測・推計・設計目標のどれか。平均か中央値か。

AIの質問1回で水をどれだけ使う?0.26mLとペットボトルの話

Googleの0.26mLは、特定時点のGeminiの推計

Googleは2025年8月、2025年5月時点のGemini Appsのテキスト質問の中央値について、水消費0.26mL、電力0.24Whと推計しました。水は2024年の自社施設群の平均WUEを用いた計算です。全質問の平均でも、現在の全AIサービスの値でもありません。同社は第三者による独立検証を受けていない旨も注記しています。出典:Googleの公表資料と注記

大切なのは、小さい数字を見つけて安心することよりも、どの仕事をどの条件で測ったかを確かめることです。短いテキスト回答、長い推論、画像生成、何度も処理を繰り返すエージェントを、すべて「質問1回」でまとめると比較しにくくなります。

ペットボトルの例も、現在の全サービスを測った結果ではない

一方、前述のLi氏らの2025年改訂論文では、GPT-3の中程度の応答10〜50回で500mLという例が示されています。場所・時期による違いと、発電側の水も含めた推計です。現在のChatGPTなどを直接測って得た共通の原単位ではありません。出典:論文の推論時の推計条件

つまり、この2つから「水消費が何百分の1になった」と計算するのは無理があります。同じ車の燃費を同じ道で測り直したような比較ではないからです。私なら、見出しの数字を並べる前に、比較条件の欄を埋めます。埋まらない欄が多ければ、優劣の判定は保留します。

WUEとは?100MWの施設で水使用量を計算してみる

WUE(Water Usage Effectiveness)は、データセンターの水使用の効率を見る指標です。一般にL/kWhで表します。ただし、分子が取水量か消費量か、分母がIT機器の電力量か施設全体の電力量かを確認してください。定義が違う数値を同じランキングに入れてはいけません。

Microsoftの公開ページでは、加湿・冷却に使う年間の水量を、IT機器の年間電力量で割る形で説明されています。FY25(2024年7月〜2025年6月)の同社対象施設の世界値は0.27L/kWhです。ここでは公表された「水使用」の指標として読み、他社の消費ベースの数値と単純比較しません。出典:Microsoft、WUEの定義と対象範囲

計算の出発点は、設備容量ではなく年間電力量

以下は実在の施設の予測ではない、仕組みを理解するための仮定計算です。IT機器の容量を100MW、年間の平均電力負荷をその50%、1年を8,760時間とします。計算資源の稼働率と電力負荷率は同じではありません。ここで使うのは電力の割合です。

100MW × 50% × 8,760時間 = 438,000MWh = 4億3,800万kWh

直接水消費をIT電力量で割ったWUEを仮に0.5L/kWhとすると、年間の直接水消費は2億1,900万Lです。kWhを分母にしたWUEなので、単位をそろえる必要があります。MWにWUEをそのまま掛けても、年間使用量にはなりません。

年間IT電力量438GWhで、仮定のWUE0.1、0.5、1.0に対応する直接水消費43.8、219、438百万L
図2:仮定計算。IT容量100MW、平均電力負荷50%、年間8,760時間。WUEは消費ベースでIT電力量が分母。実在施設の予測ではありません。
100MW・平均電力負荷50%での筆者計算
仮定のWUE年間の直接水消費
0.1L/kWh4,380万L(4万3,800m³)
0.5L/kWh2億1,900万L(21万9,000m³)
1.0L/kWh4億3,800万L(43万8,000m³)
IT電力量は年間438GWhで固定。WUEは説明用に置いた値で、特定企業の実績ではありません。発電・製造分は含みません。

発電側を含める場合、PUEを掛ける場所に注意

仮に施設全体の電力量がIT機器の1.2倍(PUE=1.2)なら、施設が使う電力は年間525.6GWhです。さらに、電力供給に伴う水消費を仮に1L/kWhと置けば、間接分は5億2,560万L。先ほどの直接分2億1,900万Lと足して7億4,460万Lになります。

式では、IT電力量 × 直接水消費WUE + IT電力量 × PUE × 電力側の水消費原単位です。IT電力量を分母とする直接WUEへ、さらにPUEを掛けて水を計上すると、定義を取り違えます。なお、1L/kWhもPUE1.2もこの例の仮定であり、現実の全体平均ではありません。

この計算で示したいのは、水の量を大きく見せることではありません。施設の中を改善した効果と、電源構成を変えた効果を分けて見られる、という点です。

液冷なら水を使わない?「ゼロ水冷却」の読み方

液冷は、チップなどの熱を液体へ移す方法です。その熱を最後に外へ逃がす設備まで説明した言葉ではありません。チップの近くで液体を循環させていても、外側の放熱に蒸発式設備を使う設計なら、新しい水が必要になり得ます。

Microsoftは、水を閉じた回路で循環させ、冷却時の蒸発をなくす新設計を公表しています。これは全施設の、生活用水・発電・製造まで含む水使用がゼロになったという意味ではありません。出典:Microsoft、2026年6月の冷却方式の説明

冷却方式の名前から確認したいこと
方式・表現確認するポイント
蒸発式冷却暑い日の補給量、再生水の利用、水質管理と排水を確認。
閉回路の液冷回路の外では何で放熱するか。蒸発式設備が残るかを確認。
乾式の放熱暑い日の電力、能力低下、非常時の運転条件を確認。
ゼロ水冷却運転時の冷却だけが対象か。初期充填、補助設備、発電側は別かを確認。

私が設備の説明を読むなら、「液冷だから水に強い」と一言で評価するより、チップ→配管→熱交換器→外気と順番に熱の行き先を追います。途中のどこで水が補給されるのかが分かれば、資料の見え方はかなり変わります。

水の効率が改善しても、AI全体の水消費は減るとは限らない

水の効率は、電気代や計算コストと同じく「1回あたり」と「全体」を分ける必要があります。1回あたりの消費が40%減っても、利用回数が2倍になれば、総量は1.2倍です。

1回の水消費が40%減り、利用回数が2倍になると、総量は20%増える仮定計算
図3:筆者による仮定計算。基準を100とし、利用回数200×1回の消費60÷100=総量120。将来の需要予測ではありません。

逆に、利用回数が同じなら40%の改善は総量の40%減につながります。「効率化には意味がない」という話ではありません。将来の総量を考えるには、効率化と利用増加の両方を置かなければならない、という話です。

この違いは半導体の投資判断でも大切です。1回のAI処理に必要な計算量が減ることと、業界全体の設備需要が減ることは同じではありません。ただし「効率が上がれば必ず需要がそれ以上に増える」と決めつけるのも逆方向の飛躍です。利用回数、処理の長さ、単価、設備の更新速度を、分けて確かめたいところです。

AI関連株の確認点:水の確保・工期・利益への影響

IEAが2026年10月14日に公表した報告では、特定したAI専用データセンター容量の約4割が、水ストレスの高い、または非常に高い地域にあるとしています。これは約4割の施設が停止する予測ではありません。出典:IEA、Powering Artificial Intelligence

投資家として考えたいのは、こうした条件が工期や利益にどう届くかです。例えば、冷却方式を変えて水の制約を避けられても、設備費や電力費が増えるかもしれません。立地を変えれば、水の問題が軽くなる一方、送電接続や通信、利用者との距離で別の費用が出るかもしれません。これは個別案件の資料で確かめるべき仮説です。

決算・設備投資資料を読むための確認表
見る対象具体的に調べる項目
データセンター運営会社許認可、水の確保、渇水時の契約、稼働予定と実際の受電・入居。
冷却・熱交換設備の企業受注の確定度、納期、売上計上、粗利益率、保守契約。
水処理関連の企業再生水・排水のどの工程を担当するか。AI向け売上の開示があるか。
半導体・メモリ企業顧客の稼働遅れが納入時期へ響くか。自社工場の水と混同しない。
株価の評価成長期待はどこまで織り込み済みか。受注増が1株利益と現金収支へ届くか。

「AIが水を使う→水関連なら全部買い」という連想だけでは、利益を受け取る会社を絞れません。工事が増えても採算が悪ければ、売上の増加ほど利益は増えません。顧客が多額の設備費を使うことと、株主が高いリターンを得ることも別です。

メモリ需要や株価を考える際は、SKハイニックス・マイクロン・サムスンの自社株買い分析も参考にしてください。設備投資、株主還元、指数の需給は、それぞれ違う経路で株価に関係します。

AIと水消費のよくある疑問

AIを使うと、その場で水道水が流れるのですか?

利用者の水道で水が流れるわけではありません。データセンターや電力供給などの負担を、処理へ割り当てて考えます。利用した場所と、水の負担が生じる場所は一致しないことがあります。

水使用の少ない企業なら、環境負荷も必ず小さいですか?

1つの指標だけでは決められません。取水と消費、電力量、電源、流域、機器製造を確かめます。例えば、飲料水の使用を再生水で置き換える効果と、消費量そのものを減らす効果も分けて読みます。

水を補充する活動で、施設の水問題は解決しますか?

補充・流域回復の活動を評価する場合も、どの流域で、いつ、どれだけの効果があるかが必要です。年単位の世界合計が釣り合っていても、暑い日の特定地域で必要な水を確保できるとは限りません。

1回あたりの数字がない企業は、どう見ればよいですか?

まず施設・地域単位の年間取水量、消費量、電力量、WUEの定義を確認します。公開されていない部分は「不明」として残す方が、他社の数字を借りて小数点まで計算するより誠実です。

私がAIの水のニュースで確かめる順番

まず「どこの、いつの、何の水か」を確かめます。次に、処理1回の話か、年間の総量の話か。そして、冷却の改善が設備費・電力費・稼働条件をどう変えるかを追います。

この順番なら、ペットボトルの例にも、「水を使わない」という新技術の発表にも振り回されにくくなります。水の問題を大げさに扱う必要も、小さく扱う必要もありません。同じ範囲と単位で比べてから、何が改善し、何が残るかを読む。AIの成長を追ううえで、ここは外したくないと思います。

次に読むなら、AIデータセンターの電力需要・PUE・関連株の確認点へ。水と電力を一緒に見ることで、チップが売れるまでの条件も考えやすくなります。

本記事は公開資料を基にした情報整理と筆者の考察で、個別銘柄の売買を推奨するものではありません。独自図表の計算条件は本文・注記に記載しています。

出典と独自図表の作成条件

Googleの技術論文(2025年8月)、Li氏らの論文、USGS、Berkeley Lab、Microsoft、IEAの一次資料を参照しました。各主張の直後にリンクを置いています。2023年の米国の水消費は歴史的な推計として使用し、2026年の実績とは扱っていません。

図1は概念の整理、図2・3は本文に示した仮定による筆者計算です。元資料の図は転載していません。計算図では製造段階を除外し、直接分と電力供給分を区別しています。施設の実績と比べる場合はWUEの定義・年度・対象範囲をそろえてください。

\宜しければ是非シェアを/
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

Advertisement / 広告

コメント

コメントする

5 × five =

目次