毎月定額で積み立てを継続することで、高い時は少なく買い、安い時は多く買う。
その継続で自動的に平均購入単価を安く抑えることが可能な投資法がドルコスト平均法です。
言葉は知っていても、実際にどのような値動きの時に効果を発揮するのかイメージ出来ていない方もいると思います。
そこでこの記事では、アセット毎に実際の過去の値動きを使ってシミュレーションしてみます。
必ずしも右肩上がりになっていなくても資産を増やすことが出来るドルコスト平均法で、果たして株や債券、不動産などのうち最も資産形成に有利なアセットは何なのか、その調べ方を知っておきましょう。
- 投資家・個人事業主・医学博士
- 投資歴15年 (学生時代から)
- レバナス/USA360/3倍ETFをメインに積立中
- 地銀→野村證券→ネット証券
- FIRE済み:好きで働いてます
ドルコスト平均法とは|簡単なおさらい
ドルコスト平均法とは、単純に言えば『一定金額ずつ積み立てる方法』です。
そうすることで、平均購入単価を下げることが出来ます。
何故なら、高い時は少なく買い、安い時は多く買う、ということを自動的に続けられるからです。
毎月10,000円買う場合:
- 100円のものは100個買えます。
- 10円なら1,000個も買えます。
- 10,000円なら1個しか買えません。
毎月100個買う、と決めてしまえば10,000円でも100個買うことになりますし、100円のバーゲンセールの時も100個しか買えません。
毎月10,000円買う、と決めてしまえばバーゲンセールで安いものを多く仕込み、値上がりした時は少しだけに抑えることが出来ます。
ドルコスト平均法が有効と言われる理由
大前提として、右肩上がりの値上がりが続く対象への投資であれば、一括投資の方がドルコスト平均法よりもずっと儲かります。
実際に、S&P500への長期投資で比較してみると良く分かります。
ETF『SPY』を用いて、一括で投資を行った場合と積立で投資を行った場合の資産総額の推移は以下の通りです。
チャートの見た目は大きく変わりませんが、数字で見ると以下の通りです。
期間:1993年末から2022年3月末までの28年3ヶ月(339ヶ月)
- 一括投資の場合には16.2倍
- 積立投資の場合には6.72倍(図中で積み立てた元本は$33,900)
※ Portfolio Visualizerで計算
このように、長期的に右肩上がりになるチャートの場合には、当然ですが初期の頃のより安い時期に仕込んでおくことが有利です。
ところが、順調に右肩上がりになっておらず、大暴落に見舞われて長期に低迷する場合などでは状況が一変します。
投資を始めてから下落が始まり、長期的に低迷が続くような場合には、ドルコスト平均法=定額積立投資が有効です。
先ほどのチャートのうち、1999年末からの10年間に焦点を当てると以下のようになります。
今度は一括投資と積立投資の印象が大きく異なります。
期間:1999年末から2009年末までの10年(120ヶ月)
- 一括投資の場合には0.9倍
- 積立投資の場合には1.23倍(図中で積み立てた元本は$12,000)
※ Portfolio Visualizerで計算
一括投資では10年経っても元本割れしている状況ですが、
ドルコスト平均法で着実に積み立てていれば含み益が出ています。
これこそが、値下がりに時に安く多く仕込める強みです。
いつ下落が襲ってくるか分からないからこそ、定額の積立=ドルコスト平均法を使う意味があります。
そもそも一括で大金を用意出来ない場合に、毎月の収入から投資に回すという積立投資を行うことは、非常に理に適った投資手法と言えます。
ボラティリティの大きいレバレッジ型商品を扱う場合には、より一層その重要性が際立ちます。
ドルコスト平均法ではチャート通りの収益にはならない
この記事のポイントになる視点です。
チャートを並べて上に来ているものが、ドルコスト平均法でも収益性が高いとは必ずしも言えません。
例えば1999年末から2009年末までの10年(120ヶ月)で、S&P500(SPY)とNASDAQ100(QQQ)でチャートの比較をしてみます。
両者のチャートを並べると、ITバブルの崩壊のダメージはNASDAQ100の方が大きく、2000年の後半からは終始S&P500(SPY)が上回っています。
つまり、1999年末に一括で投資を行った場合にはS&P500の勝利です。
ところが、ドルコスト平均法を使って積立を行った場合は順位が逆転します。
アセット別のドルコスト平均法シミュレーション
ここまで見て来たように、必ずしもチャートに勢いのある商品でなくても長期積立投資であれば利益を生むことが可能です。
では、どのアセットへの投資がドルコスト平均法による積立で最も資産を成長させることが出来るのでしょうか。
過去10年間のシミュレーションで比較します。
長期積立については15年以上、あるいはもっと長期で考えることが大事ですが、本稿ではドルコスト平均法の成績を紹介することが目的のため、ある程度の値動きがあれば十分と考えたためです。
また、この記事を訪れる方の属性を考え、投資経験の浅い方にも実感出来る期間として2010年以降を取り上げることにしました。
早速比較を行なっていきますが、ツールは引き続きPortfolio Visualizerを用います。
各アセットは以下の通りとします。
- 米国株:VTI(Vanguard Total Stock Market Index Fund ETF)
- 米国債:BND(Vanguard Total Bond ETF)
- 米国REIT:VGSIX(Vanguard Real Estate Index Fund Investor Shares)
- 金:GLD(SPDR Gold Shares)
これらの2010年末から2022年3月末までのチャートとドルコスト平均法での積立結果は以下の通りです。
先ほどまで見てきたドルコスト平均法の成績からすると、チャート的には低迷している金に対する期待も膨らむかもしれませんが、それほどではありませんでした。
順位はこの10年余りの間に目まぐるしく入れ替わります。
2011年8月末時点:金>債券>REIT>株
2016年1月末時点:REIT>株>債券>金
2022年3月末時点:株>REIT>金>債券
運用期間が長くなるほど、安定して株が上がっていく様子が見て取れます。
2016年10月以降は安定してVTIがトップです。
確かに、価格推移のチャートで見た場合よりも金の上昇は大きいですが、結局は株式の勝ちという結果です。
まとめ
ただ、結局は積み立てであっても最後に上昇してくれないことにはドルコスト平均法と言えども大きく利益を確保することは出来ません。
それは投資期間が長期になるほど、右肩上がりになるアセットが強いことを意味します。
過去100年、200年に渡って上昇を続けるアセットは株式だけであることを考えると、少なくとも10年以上の投資期間を用意できる限りは株式への投資が有利であると私は考えます。
投資は自己責任・自己判断で行われるものですので、他人の意見や印象だけで投資先を決めてしまうのはお勧め出来ません。
オンライン上の無料のツールでこのように簡単にバックテストを行うことが出来ますので、是非ご自分でも気になる商品について調べて見て下さい。
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