- ブロガー・投資家・医学博士・個人事業主
- 1歳児(心室中隔欠損症)の父親
- 既に診察券は5枚 (産科、小児科、皮膚科)
- 親子ともコロナ、ノロ経験済
- FIRE可能な資産あり、好きで働いてます
はじめに
子供の成長とお金の心配は様々ですが、今回は特に子供自身が奨学金を使って進学する場合について、どの程度の負担が発生するのかをイメージ出来るよう、実際に奨学金を返済中の筆者の視点から紹介してみます。
筆者自身の、日本学生支援機構の奨学金遍歴は以下の通りです。
- 大学(理系 4年間):第二種
- 大学院修士課程(2年間):第一種
- 大学院博士課程(3年間):第一種・・・全額返還免除
奨学金を借りてしまうと、卒業と同時に多額の借金を抱えることになるので心配ですよね。
そんなことならいっそ進学を諦めようかと考える方も少なくないでしょう。
しかしそれは利用者次第であって、親子でよく理解して利用することが肝要です。
本稿は、悩み多き子育て世代と進路選択を眼の前にした若者達の、学費に関する不安の払拭の助けとしてもらうべく、お金と教育事情をまとめます。
この記事のターゲット
- 進学したいけど学費を賄えるか悩んでいる人
- 奨学金を借りながら学業に励んでいる人
- 奨学金の返済に不安を抱えている人
お金と教育事情
親の収入と子の学力は相関する?
奨学金を利用しながら学ぶ学生は年々増加傾向であることは以下の記事の冒頭で紹介したところです。
また同記事内では奨学金の金利はその他多くの借入金と比較して極めて低いため、何かしらのローンを組む可能性がある限り繰上げ返済は非効率であることを説明しました。
日本はインフレが進まず、年収も横ばい傾向が長期に渡って改善されない、先進国の中でも稀有な存在となってしまっています。
その反面、学費が値下げされることはないどころか、学習塾等にかかる費用はかさみ、親の年収と子の学力に相関関係が見られるようになってきています。
もちろん年収が平均以下であっても子供が東大に入るケースが無いわけではありません。
日本の非正規雇用者の平均年収が175万円だけど、1億円の人もいるんだから経済政策は不要、という議論が不毛なのと一緒です。
かかる学費は?
本稿では大学および大学院進学に焦点を当てて説明します。
大学には大きく国公立と私立があることはご存知の通りです。
一部には一定の条件を課す代わりに学費が免除され、或いは給与が支給される大学(防衛大学、防衛医科大学、自治医科大学など)も存在しますが、それらは例外として検討から外しています。
一般に、4年生大学の学費は、
- 国立大学は約243万円
- 公立大学は約255万円
- 私立大学(文系)は約398万円
- 私立大学(理系)は約542万円
- 私立大学(医系)は約2357万円
とされています。
国公立と私立とでは、特に理系で大きな差が生じています。
お金の問題で選択肢を狭めたくないところですが、医系私立の学費は流石に奨学金では賄いきれません。
そうでなくても大きな額を準備するためには以下の記事なども参考にして下さい。
お金の心配をしなくて良いように、投資が大切ということは本サイトを通して一貫してお伝えしているテーマです。
投資を始めようという方は先ずは以下の記事をご覧下さい。
奨学金の種類は?
日本学生支援機構には、第一種と第二種のほか2020年より給付型の奨学金がスタートしました。
給付型についてはより厳格な条件が設けられていますが、その名の通り返済不要ですので本稿では割愛します。
第一種は無利子、第二種は有利子というのが最大の違いですが、採用条件や金額も異なります。
それぞれの制度については以下のようにまとめられていますので参考にしてみてください。
月額最大貸与額
第一種では、月額最大で6.4万円(大学)、8.8万円(大学院修士課程)または12.2万円(大学院博士課程)です。
給付型を同時に利用している場合には変わります。
私は大学院では12.2万円の貸与を受けていました。修士課程、博士課程とも上限額を利用していました。
第二種では、月額最大で12万円(大学)または15万円(大学院)です。
高専や専修学校でも貸与を受けることが出来ます。
医系では16万円(大学)までとなります。
私は学部生の頃は月額5万円を利用していました。
入学時特別増額(最大50万円)もあります。
私は大学入学時に20万円利用しました。
幸い博士課程の439万円は全額返還免除として頂けたので、返還が必要な額は471万円です。
そこそこ良い車が新車で買えてしまいます。
金額の詳細は日本学生支援機構のHPを確認下さい。
卒業/修了後
免除制度
それでは本稿のメインである返済について、私の経験を元に紹介していきます。
私は大学生の4年間+大学院修士課程の2年間+大学院博士課程の3年間、この合計9年間の間、日本学生支援機構の奨学金のお世話になってきました。
大学生の4年間は第二種、大学院の5年間は第一種の貸与で、入学金についても特別奨学金を利用しました。
このうち、幸運にも大学院博士課程は4年間の過程を1年短縮して3年間で修了することが出来、この3年間分については全額返還免除の認定を頂くことが出来ました。
第一種はこのように一定の条件を満たせば返還が免除される制度が存在しています。
詳しい条件は以下に記載があります。
過去には教職に就くことなどでその条件を満たせることが出来た期間もありましたが、20年以上も前に廃止されましたので最近の学生には認知もされていないかと思います。
2022年現在では特に優れた業績による免除制度のみが存在しています。
業績には明確な定義が設定されておらず、各大学内での推薦枠を獲得することが最優先と思います。
私も教員として学生の推薦枠を教授会で承認する過程を何度も見て来ています。
ただこれは所属する研究室や与えられた研究テーマなどによって成果の出方が変わってきますので、単純に頑張れば報われるとは言えないのが難しいところです。
私は本当に運が良かった。
周囲の手厚いサポートを受けて特許申請、学会発表、論文公表と、ある程度の業績を重ねることが出来たおかげです。
しかし、単純に運次第ということではやり切れません。
そこに返還に対する重要な考え方が潜んでいます。
毎月の返還
いざ卒業(修了)となると、返還が始まります。
大学、大学院でそれぞれ貸与を受けた契約ごとに返済金額が定められ、月割りで返済していくことになります。
返済の負担が大きい/困難な場合にはその減額や猶予を申し出ることも可能であり、無理のない返済をしていくことが前提です。
しかしながら、本稿の読者の中にも気になっている方が少なく無いと思いますが、社会人になった後、その返還が重荷となって生活苦を強いられるケースもあることが知られています。
就職難や非正規雇用の拡大で社会問題として取り上げられることも多くなり、親子両世代で収入が増えない傾向から破産に至るケースも知られるようになりました。
私自身、返還が必要な金額が400万円を超える状態で大学院を修了し、毎月3万円以上の返還を続けてきました。
入学金のための増額分は返済期間が短いため既に完済していますが、学費分については40台半ばまで返済が続きます。
確かに、その返済額は地方であれば一部屋借りられる程の金額でもあり、決して軽い負担ではありません。
しかし、考えて頂きたいのは『何のために奨学金を借りたのか?』ということです。
バイトに明け暮れるためでしょうか、友人達と飲み明かすためでしょうか。
それもあっても良いとは思います。
しかし最高学府の学生の本分は高度に学問を学ぶことです。
単に就職に有利になるからという動機だったとしても、そこは職業訓練の場ではありません。
本当に学びたいことがあって、或いは在籍後にそれを見つけるための活動をして、そして自身の将来をどのように見据えるのかを考えることが出来る人生最後のモラトリアムです。
それがブレるから奨学金の返還を単なる借金取りのような感覚で受け止めるようになってしまうのです。
私は小学5年生の頃、学習塾に通っていて休憩中に友人とはしゃいでいたことがありました。
その時に講師から言われた言葉が今も忘れられません。
『ご両親は何のために塾にお金を払われているのか良く考えなさい、ここは遊ぶ所ではありません』と。
子供ながら何か社会の大きさを感じたような、ズシッとくる自分が理解していなかったことへの反省のような感覚が芽生えました。
小学生でも分かることです、より高学年の学生が分からないはずはありません。
終わりに
個人的な考えですが、奨学金の貸与を受けるのであれば費用対効果をしっかりと意識するべきです。
実際にどうか、ではなく意識することです。
それは何も学費と将来の年収が見合うかという観点ではなく、学生時代にお金の心配をせずに学業に専念出来る環境を用意することの重要性です。
バイトに明け暮れ、友人との交友に多くの時間を割き、学業や研究を疎かにするようなことがあってはならないと思います。
概して日本の大学は入学試験が難しい一方で卒業のハードルは低く、大卒の人材が必ずしも社会人として有能とは限らず、また社会に出た後の教育・研修を柔軟に吸収する素地が鍛えられていない場合が目につきます。
それは私自身が大学で教鞭を執り、一方で企業の人材採用や若手研修に携わる中で感じることです。
それは大学での生活スタイルだけで決まるわけではありませんが、少なく無い影響があることも事実であると思います。
学生のうちはお金の意識がまだ薄く、奨学金についても自分の知らないところで借金を抱えているようなケースが多いのでは無いでしょうか。
自分が進もうとしている進路や進学先での自身の活動について、奨学金の貸与を受けようと考え始めた時から親子間でしっかりコミュニケーションを取ることがとても大切だと思います。
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