投資を始めると、その運用成績もさることながら税金はどうしたら良いのだろうかと心配になる方もいると思います。
- ちゃんと納税手続きをしないと脱税になるのでは?
- 損した分もあるので税金を取られ過ぎなのでは?
- NISA口座は非課税だから何もしなくて良いの?
- サラリーマンは20万円儲けたら確定申告?
などなど、投資信託の銘柄選びや積み立ての入金力確保に気を取られ、国が定めるルールにどのように対応しなければならないか、どのような対応が可能かを把握されていないケースも多いようです。
そこで本稿では、証券口座で得られた投資の収益・損失について、税金をどのように納めなければならないのかを解説します。
儲けるだけではなく、国民の義務としての納税を正しく行い、また正しく節税出来るように仕組みを理解しておきましょう。
- 投資家・個人事業主・医学博士
- 投資歴15年 (学生時代から)
- レバナス/USA360/3倍ETFをメインに積立中
- 地銀→野村證券→ネット証券
- FIRE済み:好きで働いてます
利益が出たら少額でも納税は必要
投資で100円でも利益を得たら税金を納める必要があります。
サラリーマンだろうがフリーターだろうがニートだろうが、皆一律にこのルールは守らなければなりません。
税率は20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)です。
金融・証券税制の基本は所得税の15%と住民税の5%で、財務省のHPなど随所で確認することが出来ますから覚えておきましょう。
利益が100円でも1億円でも変わりません。
利益の多寡によらず完全一律、累進課税ではないというところが富裕層優遇と指摘される所以でもあります。
確定申告が必要かどうかは、納税が必要かどうかとは異なる議論です。
大事なことなので繰り返します。
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納税する方法
所得税と住民税を納める方法は大きく3つです。
特定口座(源泉徴収)
証券会社で口座を解説する際に、特定口座にするのか一般口座にするのかを選ぶことになります。
特定口座であれば収益に対して税金の計算を行い、利益確定時に引き落としをしてもらえます。
上記のごとく金融所得に対する税率は誰でも20.315%なので、少なくとも『税率を調整する必要がない』からです。
※ 後で説明する損益通算を行うことで、払い過ぎた分は取り戻すことが出来ます。
確定申告
ただ、利益が20万円以下の場合であっても確定申告が必要になる場合もあります。
例えば、源泉徴収や年末調整をされなかった副業などとの合計額として20万円を超える場合です。
給与を2か所以上から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超える場合は確定申告が必要。
確定申告が必要な方(国税庁)
ただし、給与所得の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除及び基礎控除を除く。)を差し引いた残りの金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円以下の方は、申告は不要です。
要するに、儲けが少なければ面倒な確定申告は免除します、というルールです。
従って、例えば副業でブログ収益が10万円、源泉徴収されなかった原稿料が5万円、証券会社Aで3万円、証券会社Bで3万円のそれぞれ収益があった場合(合計21万円)などは確定申告が必要です。
加えて気をつけなければならないのは、20万円以下は確定申告不要と明示しているのが国税庁であることです。
つまり、申告が不要なのは国に納める所得税についてだけであり、各自治体に納める住民税は20万円どころか1万円でも納税の必要があります。
確定申告をしなければ20万円以下の副業収入の存在が自治体に知られることはありませんが、住民税の納税を怠ればそれが確信犯であっても脱税は脱税です。
確信犯・・・正しいと信じてなされる犯罪行為,又はその行為を行う人のこと
文化庁HPより
知りませんでした、では済まされませんので気をつけましょう。
住民税申告
ただし、上述の通り給与所得以外に金融所得が少しでもある場合には、その分の住民税を納税しなければなりませんので注意が必要です。
20万円以下の金融所得があり、確定申告をしないのであれば、住民税申告は行うようにしましょう。
税務署と地方自治体は連携していますので、確定申告を行うことで済ませることが出来ます。
そのため、この後説明する節税対策と合わせ、確定申告を行っておくことをお勧めします。
NISA口座なら非課税
NISA(ニーサ:Nippon Individual Saving Account)とは、毎年一定金額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になる、つまり、税金がかからなくなる制度です(金融庁HP より)。
一定の枠内で購入された金融商品については、それがどれだけ値上がりしようとも、その売却益に課税されることはありません。
例えば10万円分の投資信託やETFを購入し、極端な話それが1億円になったとしても税金はゼロです。
ただしNISAにはさまざまな縛りもありますので、理解した上で利用するようにしましょう。
節税する方法
納税した上で、ルールを知って正しく節税を行いましょう。
大切な2つのポイントを解説します。
いずれも確定申告で対応することが出来ます。
損益通算(年度またぎ)
投資信託やETFなどの損失は3年間繰り越すことが可能です。
損失と利益を相殺して、それでも尚マイナス(損失)となった分を翌年度以降に繰り越すことが出来ます。
1年目に100万円の損失、2年目に100万円の利益が出た場合、2年目は利益100万円と1年目の損失100万円とを相殺して利益ゼロとなり、納税の必要がなくなります。
1年目に100万円の損失、2年目に20万円の利益、3年目に20万円の利益、4年目に50万円の利益を挙げた場合、1年目の損失を3年間で取り戻せていませんので、1〜4年目まで全て金融所得に対する課税はゼロです。
1年目に100万円の損失、2年目に200万円の利益を挙げた場合には、2年目は100万円分(当年利益200万円-前年損失100万円)にだけ課税されます。
損失を確定させてしまった年があれば、翌年度以降の確定申告で節税することが出来ます。
※ 損失を過去の年度の利益と相殺することは出来ません
損益通算(複数口座またぎ)
同一年度内で、複数の証券口座間での損益も忘れずに相殺するようにしましょう。
このケースは長期投資をされている方にとってはあまり多く無いかもしれませんが、重要な節税ポイントです。
楽天証券で10万円の利益確定、SBI証券で10万円の損失確定をした年は、それぞれを相殺して金融所得課税はゼロになります。
LINE証券で投資信託50万円の利益確定、松井証券で投資信託20万円の損失確定、楽天証券で投資信託50万円の利益とETF30万円の損失確定の場合、全てを通算して50万円分に課税されます。
確定申告による処理を行わないと、それぞれ利益を確定した証券口座で源泉徴収された税金が戻って来ません。
忘れずに確定申告を行っておきましょう。
終わりに
金融所得に対する税率は20.315%で一律のため、100億儲けても100万円儲けても税率が変わりません。
仮想通貨は雑所得に分類されるため累進課税制度の餌食になりますが(最大所得税率45%)、株式や投資信託、ETFの税率は一定であるため、大きな利益を挙げた時の税率が相対的に低く抑えられます。
これが富裕層を優遇していると指摘を受ける所以です。
2021年に誕生した岸田政権では、この税率にテコ入れをする構想を発表して投資家達から大バッシングを受けたことも、この制度構造を見るに頷けます。
投資で得た運用益100億に対して、20億3,150万円の税金が掛かっていたものが、今度は30億(仮)になりますと言われたら誰だって嫌な気がしますよね。
ビットコインで100億円の利益を上げれば手元にはその半分も残らないので、それに比べればマシですが。。。
投資をすることそのものもそうですが、知識が無いものが搾取される社会です。
お金にまつわる正しい知識をつけ、日々マネーリテラシーの向上に努めましょう。
当サイトのその他の記事も参考にして頂ければ幸いです。
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