NASDAQ100ほどのボラティリティが無く、緩やかでも上昇を続けるSP500に目を付け、高倍率レバレッジでハイリターンを狙った秀逸な商品。
と言いたいところですが、、、
4倍は流石にやり過ぎでは、、、S&P500ならせいぜい3倍(SPXL)で十分ではないでしょうか。
というのが率直な感想です。
ベジータが地球に初めて来た時に悟空が使った界王拳の最大倍率が4倍でしたが、身が持ちませんでしたよね。
ベストは2倍、頑張っても3倍までにしておくべきと言う、まさにあんなイメージです(ドラゴンボールをご存じない方、すみません)。
しかし面白い商品ではありますので、ほんのちょっとだけ持ってみても良いかなと密かに考えていたりします。
- 投資家・個人事業主・医学博士
- 投資歴15年 (学生時代から)
- レバナス/USA360/3倍ETFをメインに積立中
- 地銀→野村證券→ネット証券
- FIRE済み:好きで働いてます
S&P500・4倍ブル型ファンドとは
T&Dアセットマネジメント株式会社が2022年2月17日に誕生させた投資信託です。
その名の通り米国の人気インデックスS&P500に、4倍のレバレッジをかけた商品です。
4倍という倍率はなかなかに相当なものです。
2倍や3倍の商品は投資信託やETFでお馴染みですが、S&P500に4倍というのは私が知る限りこれが初めてです。
有価証券届出書が発行された当時から一部の投資家の間では話題になっており、大半の意見は『やり過ぎ』というものでした。
ただその意見は長期投資の視点に立ったもので、投機が好きな短期決戦を挑む者たちにとっては面白い商品だと思います。
4倍は高過ぎか?
4倍というレバレッジ倍率は果たして高過ぎと言えるでしょうか?
実際に4倍にして長期的に勝てるかどうかは誰にも分かりませんが、歴史的にそのようなETFが誕生してこなかったことからも分かる通り『尋常ではない』倍率であることは確かです。
では4倍にすると何か不都合があるのでしょうか。
一般に心配されるであろう2つの視点を解説します。
追証の発生や資産がゼロになる可能性は無い
高いレバレッジを採用すると、どうしても不安になるのは大暴落の時です。
4倍ということは、手数料等の仔細は省いて計算しても1日に25%の暴落が訪れた場合=100%の下落で理論的に資産はゼロになります。
そのようなことが起こる可能性はあるでしょうか。
結論:ありません。
なぜなら、市場にそれほどの混乱が生じた際には『投資家の頭を冷やすため』に備わったサーキットブレーカーが発動するからです。
S&P500のサーキットブレーカー:
- 7%の下落=15分間取引停止
- 13%の下落=さらに15分間の取引停止
- 20%の下落=その日は取引停止
つまりS&P500の1日あたりの最大下落幅は20%であり、その場合に4倍レバレッジの下落幅は80%となります。
1日あたり80%の下落というのはとんでもない暴落ではありますが、ゼロにはなりません。
追証の発生も投資信託ですからありません。
投資信託を購入する投資家は投資信託という商品に対して出資しているのであって、直接株式等に投資をしているわけでは無いので追証責任をそもそも負っていないからです。
逓減リスクはかなり大きい
4倍のレバレッジを用いたS&P500連動型商品が無いので、手近な投資信託で代用して様子を見てみましょう。
S&P500よりもショボい値動きの日本株に、4.3倍という高レバレッジ倍率を掛けた冒険的投資信託があります。
楽天日本株4.3倍ブル
この商品と、同じく楽天日本株の3倍の商品、そしてレバレッジ無しの商品です。
2021年2月から2022年2月の1年間で比べてみると、以下のようになります。
見事な逓減ですね。
この1年間はほぼ横ばいだった日本株、レバレッジ倍率が高いほど目に見えて大きな逓減を来しているのが明らかです。
これほど成長しないインデックスが対象であれば、レバレッジ3倍どころか2倍でも妙味は無いでしょう。
日本株ではこのような結果でしたが、しかし成長しているS&P500なら状況は違うのでは?という声も上がって来そうです。
次は、『勝てる見込み』について解説していきます。
4倍でも長期積立で成長させられる?
成長できる可能性は低くは無いかもしれません。
その条件は以下の2つです。
- S&P500のボラティリティが小さいこと
- 長期的に右肩上がりになること
肯定的なデータを二つ挙げてみましょう。
4.3倍でも5年スパンで見れば上がっている
まず先ほど例に示した4.3倍ブルですが、1年では無く5年間の成績を見てみます。
すると1年間での印象とは異なり、乱高下しながらも上昇しているのが分かります。
当然上がる時も下がる時も3倍レバレッジより4.3倍レバレッジの方が傾斜は急ですが、いずれもレバレッジ無しよりも上昇している傾向が見られます。
ただし気をつけたいのは、結局このチャートではレバレッジ3倍の成績が2022年2月の段階では最も高く、5年間を通しても4.3倍の大きなアドバンテージは無さそうであることです。
米国債券は27倍レバレッジでも上昇
株式とはまた概念が異なりますので、あくまでも参考程度に。
楽天が出しているUSA360という投資信託は、その資金の90%をVTIに入れ、残りの10%(実際はその一部)を証拠金として270%分の米国債券を保有するレバレッジ投資信託です。
ここで言いたいことは、当たり前ですがゆっくりでも上昇傾向が続く対象であれば長期の高倍率レバレッジは有効である、ということです。
例え年間の平均利回りが小さなインデックスであっても、上がり続けるならレバレッジを大きく取ることはリターンの増加に対して有効な手立てになり得ます。
S&P500・4倍ブル型ファンドのポイントと、、、
この投資信託の最大のポイントは、私が思うにターゲットとなるインデックスがS&P500であってNASDAQ100では無いところです。
要するに、長期的に値上がりはするものの、ハイテク銘柄に偏りが大きくボラティリティも大きなNASDAQ100で4倍は無謀。
しかし、さらに多業種に分散され、値動きが緩やかでも長期的に上昇を続けるS&P500であればレバレッジ4倍でも活かせる、という考え方です。
では、この商品を軸に積立投資を行いますか?と問われれば、、、
私の答えはNOです。
良さそうな話をしておいてそれか、とお叱りを受けるかも知れませんが、あくまでも私が積立の主軸に据えるかと考えた場合の一意見です。
投資信託を売る側はあくまでも手数料ビジネスですので、そう思わせて顧客の射幸心を煽り、儲かりそうな可能性を感じさせることが出来れば勝ちです。
従って、
- 購入する人は少なからずいるでしょう。
- そして儲けを出す人もいれば、狼狽売りに泣く人もそれぞれ大勢出てくることでしょう。
- 短期売買で利ざやを狙う人も出てくることでしょう。
ただ、この記事で紹介したデータからも明らかな通り、4倍ものレバレッジを活かして長期投資を行うには(あくまで私の主観では)リスクが大き過ぎます。
一方、2倍や3倍でも十分すぎるほどの爆益を産むことが出来ますので、敢えて『どうなるか分からない』4倍レバレッジ投資信託に力を入れる必要は感じません。
興味本位で少しだけ持ってみてもいいかなとは冒頭にも書きましたが、あくまでもその程度に留めておこうと思います。
レバレッジ4倍:まとめ
投資信託の登場でTwitterを賑わせたのは、2021年11月に登場した楽天レバナス以来でしょうか。
米国市場のインデックスにレバレッジをかける、という手法は誰もが期待感を持つため資金流入に繋げやすい側面があるのでしょう。
特に大和レバナスやQLD、TQQQの目を見張る成績が過去の実績としてあることが強みです。
しかしNASDAQ100に対しては未だに懐疑的な見方(ITバブル崩壊の再来可能性の指摘)をする投資家も少なく無く、それもあってS&P500の人気も衰えません。
そんなS&P500の最高レバレッジ商品は、これまではETFのSPXLでした。
SPXLは3倍でありながら2倍のQLDと同等の成績で、もう少し倍率アップを望む声が無かったわけではありません。
そんな折に登場したS&P500・4倍ブル型ファンド、相当以前から企画されていたのだと思います。
望みが叶ったと歓喜する投資家もいるでしょうから、利用される場合にはその成功を祈るばかりです。
個人的にはまずは5年程度、様子を見ながら遊んでみようと思います。
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