謎に満ちた天体、ブラックホール。
ダークマター、反物質と並んで厨二心をくすぐる最強ワードの一角です。
地球上で何が起ころうがこれらの持つ力には遠く及ばず、どんな天才科学者も理解出来ない神秘的なイメージもあります。
本稿では特にブラックホールに着目し、これまでに人類が知り得た事実を分かり易くピックアップして紹介します。
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ブラックホールとは
宇宙には他にもヤバすぎる天体が多く存在していますが、その中でも一般の知名度が高く、ひときわヤバさが光ります。
よくSF映画に登場することから架空の設定と思ってしまいそうなほどの存在ですが、現実に存在していることが確実です。
私たちの住む太陽系が所属する天の川銀河の中心にも超巨大ブラックホールが存在することが知られていて、いて座A*(エー・スター)と呼ばれています。
いて座A*の周囲を公転している恒星S2の観測によって、銀河系中心に超大質量ブラックホールが存在する証拠と、ブラックホールに関するデータがもたらされ、いて座A*がその存在位置であるという結論になっている。
Wikipedia いて座A*より引用
- 何がどうなればブラックホールになるのか
- どんな特徴を持つ天体なのか
- 近年急速に解明が進むブラックホールの謎とは
早速見ていきましょう。
難しく考えず、何やら凄いのが宇宙にはあるんだな、程度で見て頂ければストレス解消になると思います。
先ずは何がどうなればブラックホールになるのか。
答えは物体がそのシュバルツシルト半径以下になることです。
シュバルツシルト半径
ブラックホールは一定の条件をクリアすれば誕生することが出来ます。
現実的にはある程度以上の質量のある恒星でなければブラックホールにはなりませんが、どの程度高密度になればブラックホールたり得るのかは計算で求められます。
理屈上は『地球がブラックホールになるには?』という問いにも回答が出来るわけです。
ブラックホールは超高密度ですが、どこまで密度が上がればブラックホールなのかが明らかになっています。
計算で求めることが出来、1916年にカール・シュバルツシルト氏が明らかにしたものです。
物理的な計算や説明は省き、とにかく例を挙げて説明しましょう。
- 太陽のシュバルツシルト半径は約3km
- 地球のシュバルツシルト半径は約0.9cm
つまり、地球の全質量がイクラくらいのサイズに収まればブラックホールになれるのです。
下の画像のように、左上から順に地球を小さく圧縮していって、イクラサイズになった時、ブラックホールになることが出来ます。
想像しただけでも尋常では無い高密度な物体になりますよね。
中性子星は角砂糖1個分で10億トンの重さがあると言われてしばしば驚愕されますが、ブラックホールはそんな中性子星をも遥かに超越した存在です。
(中性子星はブラックホールのなり損ない、と言うことも出来ます)
ここで重要なのは、そのシュバルツシルト半径の内側と外側には明確な違いがあり、内側からは光であっても脱出出来ない空間になります。
その境界面のことを事象の地平面と言います。次はその境界線について説明します。
事象の地平面
事象の地平面は、いわばブラックホールの表面です。
情報は光や電磁波などにより伝達され、その最大速度は光速であるが、光などでも到達できなくなる領域(距離)が存在し、ここより先の情報を我々は知ることができない。この境界を指し「事象の地平面」と呼ぶ。
Wikipedia 事象の地平面より
つまり、ブラックホールの外側にいる我々にはブラックホールの内側を知るすべがない、ということになります。
少なくとも2022年1月までの人類には。
ただ、事象の地平面までのことは計算である程度の確度で知ることが出来ます。
そこで、この面を超えてブラックホール内部に侵入することをシミュレーションして見ます。
その答えは、ブラックホールに向かう者を外から観測した場合と実際に突入する場合とで大きく異なります。
外から見る場合:
ブラックホールに向けて無限に落ち続けるが、いつまでも到達出来ない
自ら突入する場合:
普通に突入、内部へ侵入
一般相対性理論によれば、外から見るとブラックホールに近付くに連れてその速度はどんどん低下し、事象の地平面直前まで行くとほとんど止まったように見え、いつまで経っても内部に到達しないように見えます。
一方、実際に突入する側から見ると、いともたやすく内部に入れます(入った人工物はありませんが、計算上です)。
時間の早さが相対的に大きく異なるためで、突入する側からすると外にいる観測者達の時間の経過が凄まじく加速することになります。
これは重力と時間の進み方の問題で、強い重力によって時間の進み方が遅くなることからこのような現象が起こります。
この他にも、近付くだけで潮汐力でスパゲッティ現象が起こるなど様々な物理現象が知られています。
そしてしばしばブラックホールの想像図に描かれる円盤状の取り巻きは降着円盤と呼ばれ、凄まじいエネルギーを発しています。
原子力発電など言うに及ばず、太陽でさえもそのエネルギー効率は足元にも及びません。
一体どういうことか、次はエネルギー変換効率の視点で見てみましょう。
周囲に存在する降着円盤
ブラックホールの周囲には降着円盤と呼ばれる渦巻き状の構造体が存在するとされています。
中心のブラックホールの巨大な重力に引かれながら、質量を持った物質が吸い込まれていく過程で生じる構造物です。
降着円盤(Accretion disk)のイメージは以下の動画が参考になります。
ブラックホールの極近傍では、回転しながら落下する物質は超高温になりX線を放つほどで、質量のエネルギー変換効率が格段に高まっています。
質量→エネルギー変換効率は以下の通り:
核融合 0.7%
降着円盤 10〜40%
対消滅 100%
ここで言う効率とは、質量が持つエネルギーをどれだけ取り出せるか、と言うものです。
質量とエネルギーは等価である、というのはアインシュタインの発見した以下の式が有名です。
この関係性をアインシュタインが発見したのは1907年でした。
Eはエネルギー、単位はJ [ジュール]
mは質量、単位はkg [キログラム]
cは光速、単位はm/s [メートル/秒]
質量とエネルギーの等価性、つまり質量はエネルギーそのもの、エネルギーは質量そのものであると言う宇宙の摂理です。
c(光速)は恐ろしく高速で、299,792,458 m/sです。
従って、
1gの質量は9×109 [J]のエネルギーと等価です。
広島の原爆のエネルギーを軽く超えています。
1円玉1枚が原爆以上の破壊力を持っている、と言うことです。
絶対そんなの嘘でしょ。。。
そう思いますよね、直感的には理解し難いと思います、、、しかし事実です。
人類の2022年現在の文明レベルでは、質量をこれだけ高効率にエネルギーに変換することは出来ません。
人類の持つ最強の発電施設、原子力発電所ですらその変換効率は核融合(=太陽)にすら遠く及ばず、降着円盤は正に人知を超えた現象です。
凄まじい大質量をこれだけの変換効率で消費し続けるブラックホールは本当に化け物、もはや人類の言葉では形容し難い存在です。
ブラックホールにはこの他にも驚異的で謎に満ちた性質が沢山あります。
それらが近年急速に紐解かれ始めています。
最後にその一端を紹介します。
解かれ始めたブラックホールの謎
これだけ人知を超えた存在であるブラックホールも、近年急速にその謎が解かれ始めています。
2020年のノーベル物理学賞がブラックホール研究に対して与えられたことからも、その重要性が窺い知れます。
簡単にキーワードだけを集めて見てみても、これだけの発見が相次いでいます(独断と偏見でピックアップしたほんの一部です)。
超巨大ブラックホールの位置を特定(2011年)
ブラックホールの撮影に成功(2019年)
ブラックホールを大容量ストレージとして利用出来る可能性(2020年)
ブラックホールから吹く風の謎を解明(2020年)
ブラックホール同士の衝突を確認(2020年)
近隣銀河に隠れたブラックホールを発見(2021年)
我々の所属する天の川銀河の中心にも超巨大ブラックホールが存在し、太陽系はその周りを1週あたり2億5,000万年かけて周回していることが分かっています。
夜空を見上げて見える天の川の奥にそれは存在しています。
身近な気もしますし、非現実的な気もします。
今後の更なる謎解きに期待したいところです。
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