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処方された薬が一体何者か、知る方法:危険も潜む自己判断

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目次

処方箋薬の情報:開発と説明書

処方箋のイメージ

大問題:低い服薬コンプライアンス

この記事では、医師から処方された医薬品・医療機器について、その情報を知るための方法を簡単に解説します。

貰った薬について、

  • ググっても詳しい情報は出てこない、
  • 難しい医学書を読まないと情報が取れない、

と考えている方にはその簡単な調べ方もお伝えします。

もちろん、医師や薬剤師からの説明があり、お薬手帳に貼る紙にも簡単な説明が記載されていますので、それで十分と思う方も多いでしょう。

先生を信頼しているので疑念を持つことはなく、処方された薬は飲めば良いんでしょ、という方も多いと思います。

しかし一方で、服薬コンプライアンス(処方された薬を患者さんがしっかり飲んでくれているか?)が悪いのも事実なのです。

つまり、単純な飲み忘れに留まらず、自己判断で服薬を止めてしまうことや、勝手に増減する事などが結構あるということです。

皆さんも思い当たりませんか?

処方された薬を飲みきる前に症状が改善したので、余りを取っておき、またいつの日か同様の症状が出た時に飲んでみたり。。。

正確に飲んでいる患者さんの割合は実にわずか1%という調査結果さえあります。

お子さんに処方された薬についても気になる方がいらっしゃることでしょう。

その場合には服薬コンプライアンスは良好なケースが多いと思いますが、薬の実態を知りたいという想いはあるかも知れません。

処方箋薬の服薬コンプライアンス問題

そこで、本記事では処方箋薬の実態を理解頂くとともに、自身で情報を収集する方法をお伝えします。

安全性と有効性

薬の開発イメージ

服薬コンプライアンスが悪いという事実を先ず挙げましたが、多くの場合、服薬ペースが少々変わっても安全性に大きな問題は起こらないように考えられています。注) だから守らなくては良いということではありません!!

薬の開発に際して、治験という言葉を聞かれたことがあるかもしれません。

これは新薬の候補が出来た時、ヒトでその安全性と有効性を検証するものと考えて下さい。

薬は、典型的にはPhase1→Phase2→Phase3→市販後という段階を追って開発が進みます。

このうちPhase1という部分は人数を絞り、安全性に主眼を置いて投与が行われます。

安全かどうかを確認するのが最優先(これを主要評価項目と言います)で、効くか効かないかは二の次(これを副次評価項目と言います)なのです。

非臨床試験〜治験Phase 1

そのためPhase1は、製薬企業などが効くと考えている量よりも少ない量から安全性確認のための投与が始まります。

因みに、治験を始める前には膨大な研究データの蓄積があります。

しばしば新薬の開発には○○億円掛かるなどと言われることがありますが、あながち間違っていません(大半は治験に掛かる費用だったりしますが)。

その膨大な研究データの中には、ヒトに投与しても大丈夫か?という観点で実験動物での投与試験が実施されます。

極めて厳格な動物倫理審査を経て実施される研究ではありますが、動物愛護の観点からは今なお逆風が強く、研究者たちも必要悪と認識しながらも続けられています。

薬の性質によって、この段階で投与される患者さんの属性が変わったりします。

新型コロナのワクチンのような場合には一般に健康な人が対象になりますが、がん治療薬などでこれまでにない成分だったりすると、標準的な治療を全て終えても病勢を抑えられない患者さんなどを対象にするように言われたりします。

Phase 2以降にも共通しますが、この段階で観察された有害事象(投与された薬と関係あるか否かは関係なく)は全て集計されます。

もちろん薬との因果関係はしっかり調査議論されますが、あらゆる症状が集まってくるのが通常です。

その中で、因果関係がないとは言えない、と判断されたものが副作用とされます。

治験Phase 2以降

Phase2になってようやく、効くかどうか(有効性)を確認します。

開発者側は当然、どのような疾患に効かせようとしているのか考えていますので、治験を開始する前に『何にどう効いたら成功か』を予め設定しておきます。

設定したゴール以外にいくら都合の良いデータが出ても、それを理由に承認を目指すことは出来ません

例えば、仮に解熱剤を開発していたとして、ゴール(主要評価項目)はある状態における解熱と設定した場合。

やってみたら熱は下がらなかったけど咳は出なくなった、などの場合には治験は失敗です。

せっかくだから咳止めとして承認してもらって販売しよう、ということは出来ないのです。

ここで言いたいのは、治験というのは厳正なルールに則って科学的に行われるものであって、なんとなくとか状況を見ながらとか、好き勝手やるのりしろは残されていないのです。

治験で何人に投与すればいいのか、どのような群構成(薬の投与量、比較対照群など)にするのかなど、全て開始前に決めておきます。

50人で試してみてイマイチ分からないから、途中でもう50人追加しよう、などということもNGです。

ただし、予め途中で変更可能な余地を残した設計にすることは必ずしもNGではありません。

大事なのは、後になって最初に決めたルールは変えられない、ということです。

Phase2よりPhase3は大規模なものになりますが、これは『有効性がありそうか(Phase2)』から『有効であることの検証(Phase3)』というステップアップになります。

Y-bow

Phase2までうまくいっていても、人数を増やしてしっかり検証したら結局は効いていなかった、ということもあるので最後まで油断出来ません

失敗を極度に恐れる日本文化においては、特に保守的にならざるを得ないのも解らないではありません。

薬の添付文書とは

さて、このように開発されてきた薬の『取扱説明書』はどこにあるでしょうか。

ドラッグストアで買える市販のお薬は、開封すると説明書が入っていますよね。

読まない方が多いかもしれませんが、どんな症状に効くのか、どんな成分で構成されているのかなど細かく書いてあると思います。

病院で処方された薬はどうでしょうか。

処方箋を持って薬局に行き、簡単な説明書きは頂くかもしれませんが、あまり細かな情報は載っていないですよね。

市販薬のような細かな説明書は無いのでしょうか。

あります。

添付文書というものが全ての医薬品、医療機器、再生医療当製品には必ずあって、誰もが読むことが出来ます。

添付文書とは、要は薬の詳細な説明書で、医療従事者が読むことを前提に整理された情報です。

しかし患者さんが読むことも出来ます。

例えば解熱剤を例に取ってみましょう。

ボルタレン錠25mgのページの左下の部分に『PDFファイル』と書かれたリンクがあります。

これが添付文書です。

実際の中身を見てみましょう。

以下はノバルティス社のボルタレン錠25mgの添付文書の1ページ目です。

ボルタレンの添付文書

どの薬もおおよそこのフォーマットで記載されています。

左下部分に効能・効果についての記載がありますね。

処方された患者さんは原則としてここに記載の疾患/症状のはずです。

また右上には服薬量が記載されています。

そして注意情報と続きます。

少し先に進んでみましょう。3ページ目です。

ボルタレンの添付文書3ページ目

副作用や、妊婦・子供への投与に関する注意書きが並んでいます。

副作用の部分は見れば見るほど怖くなるかもしれませんが、上に記載した治験を経て詳細に集積されたものですので、極めて頻度が低いものも含まれています。

終わりに:クスリはリスク

添付文書を入手すれば誰でも処方薬の詳細な情報が得られます。

その情報は正確な服薬量を遵守した場合(=治験)に得られるデータです。

つまり、処方された通りに服用出来なければそのデータが参考にならない可能性あるのです。

安易に飲むタイミングを変えてしまったり、容量を変えてしまったり、勝手に服薬を止めてしまうなど、自己判断は思わぬリスクを招く恐れがあるのです。

薬はリスクをベネフィット(利益)が上回るように出来ています。

そうでなければ承認されません。

しかし、繰り返しますがそれは正しく使った場合です。

せっかく長い年月を経て人類が蓄積してきた薬学の結晶を、正しく使用してその利益を享受しましょう。


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