宇宙は謎ばかり、人類の叡智の全く及ばない空間が広がっています。
この記事では、銀河を構成する星々の運動について、大きな謎の一つとされている銀河の回転曲線問題について紹介します。
肉眼でも、天体望遠鏡でも、空を見上げれば目に入る身近な存在で、私たちを包み込んでいる空間。
天の川を夏の夜空に見て“綺麗だなぁ”と感じる裏に、実は未だに判明していない物理的な謎が秘められているのです。
- ブロガー・投資家・医学博士・個人事業主
- 宇宙好き
- 高校では生物・物理
- 21世紀は物理で稼げないから医学へ(邪)
- FIRE可能な資産あり、好きで働いてます
物体の回転速度と遠心力
遠心力という言葉は聞いたことがあると思いますが、実際にどんな力か理解しておきましょう。
遠心力とは、回転運動などをしている物体に働く慣性力で、回転の中心から外側に向かって働く“見かけ上”の力です。
高校物理で習う内容ですが、言葉で聞くと何だかよく分からないかもしれません。
しかし体感的には皆さんよく理解出来るのではないでしょうか。
慣性力とは
慣性力とは、物体がその運動を続けようとする力です。
例えば、車の運転で見てみましょう。
車で走っていて急ブレーキを踏めば、体は前に押されるように感じます。
これは、走行中に体は前に運動していて、ブレーキによる車体の減速に対して体が前に進み続けようと働く力です。
逆に急発進・急加速をすれば体は後ろに引っ張られるような、座席に押し付けられるような感覚を覚えます。
これは、車体は前に進み出しているのに体はその場に留まり続けようとしているから感じる力です。
“見かけ上”というのは、何もあなたの体を減速時に誰かが背中を押しているわけでもなければ、加速時にあなたを誰かがシートに押しつけているわけでもない、ということです。
遠心力とは
この慣性力が、直線運動ではなく回転運動だと遠心力として感じることが出来ます。
例えば車で急カーブに差し掛かった時を思い出してみましょう。
右カーブを曲がる時、体はカーブと反対側の左向きに傾く力が働きます。
これが遠心力です。
バスでも電車でも急カーブではカーブの方向と逆向きに乗客は引っ張られるように感じます。
これは、直線運動していたあなたの体がそのまま直線運動を続けようという力、慣性力が働いているからに他なりません。
では、慣性力や遠心力が“見かけ上の”力なのであれば、“実際の”力は一体何なのでしょうか。
回転運動で考えてみましょう、最も分かりやすい例はハンマー投げです。
選手は鉄球に繋がったワイヤーを持って振り回し、手を離せば鉄球が飛んでいきます。
この時、鉄球にかかっている力はどんなものでしょうか。
あなたが鉄球の中にいれば、もちろん遠心力は感じることでしょう。
しかし、鉄球を回転させているのは選手であり、選手がワイヤーを通じて鉄球にかけている力は“手前に引く力”です。
選手が鉄球を内側に引っ張り続ける限り、鉄球は直線運動から軌道を内側に変えられ、ひたすら回転運動を行うのです。
だから、選手が手を離せば鉄球はその瞬間に進んでいた方向に直線的に飛んでいきます。
決して回転しながら飛んでいくことはありません。手を離れた瞬間の進行方向に飛んでいきます。
この時、どれだけ遠くに飛ばせるかは、どれだけ高速で回転させられるかにかかっています。
回転速度を速めるにはどうすれば良いでしょうか。
回転速度を速めるほど、手前に引く力はより強くしなければなりません。
物理的にはこの手前に引く力を向心力と呼び、以下の式で表されます。
向心力 F=mv2/rm=質量、v=速度、r=回転半径
角速度ωを使って以下のように表現される場合もあります。
向心力 F=mrω2要するに、向心力は物体が重いほど強く、速度が速いほど強く、そして距離が離れるほど弱くなります。
回転運動を続けるためには、中心から離れるほど向心力を弱めなければならない、ということです。
このことを頭に入れて、宇宙空間の例を見てみましょう。
宇宙空間における向心力
では、宇宙空間において星々が中心にある星の周りを回転する時の向心力を考えてみましょう。
星々の間で働く向心力は万有引力です。
太陽系の場合
ハンマー投げのように星々がワイヤーでつながれていることは無いので目に見えない力ですが、太陽の周りを回る地球も、地球の周りを回る月も、万有引力で繋ぎとめられています。
その万有引力(星と星とが互いに引き合う力)を向心力として、つまり太陽と引き合うことによって惑星は公転しています。
距離が離れれば万有引力も弱まり、従って公転速度も落ちるはずです。
太陽に最も近い水星から、最も遠い海王星までの惑星と冥王星の速度を比べてみましょう。
太陽から遠く離れるほどに、公転する速度がどんどん低下していくのが分かります。
理論通り、典型的な速度分布になっていますね。
イメージ的にもそうでは無いでしょうか、外縁部の天王星や海王星が、太陽に最も近い水星のような速度で回転していたらあっという間にどこかに吹っ飛んでいってしまいそうですよね。
この法則通りに銀河系もそうなっていれば何の不思議もないのですが。。。
銀河の場合
銀河系の場合、太陽を含む多くの恒星が銀河中心に存在する超巨大ブラックホールを中心とした回転体であることが分かっています。
夜空を見上げて見える天の川こそが、我々の所属している天の川銀河の中心方向を見た景色です。
さてこの銀河、やはり中心から離れるほどに回転速度が落ちているのでしょうか。
実は銀河の星々はどの位置でもほぼ速度が一定になっています。
先ほど見た太陽系の惑星の公転速度のグラフと同様にして、銀河の中心からの距離ごとの回転速度をグラフにしたものは以下の通りです。
どういうことでしょうか、理論予測と観測結果とが大きく乖離しています。
その理由は未だによく分かっていません。
恐らく目に見えない質量、ダークマターやダークエネルギーが計算に入っていないためではないかと推測されていますが、実態は解明されていません。
銀河系のどの位置にある星も等速度で運動しているとなれば、外縁部に位置する星々を銀河に繋ぎとめられるのは何故なのでしょうか。
遠心力、向心力といった物理学の基本的な力だけでは説明出来ない全く未知の力があるのか?と言われれば、恐らくそうではないものと思われます。
ニュートン、アインシュタインらが発見してきた数々の物理法則に大きな漏れがあり、人類が全く気付いていない力があるとするならば、その他の現象があまりにもうまく説明され過ぎていることになりますので。
この説明出来ない現象のことを、銀河の回転曲線問題と言います。
もっと難しいことが知りたい方はWikipediaからリンクを辿ってみたり、最新の学術論文を当たってみるなどしてみて下さい。
この記事では、何となく宇宙の謎に触れ、興味を持って頂くことが目的ですのでそこまで説明を掘り下げることはしませんし、著者自身が宇宙物理学の専門家ではないので責任を持って解説出来るレベルに限界がありますので。。。
銀河の回転曲線問題:まとめ
人類が知る物理法則では説明出来ない銀河の星々の動き。
宇宙空間には人知の及ばない数々の天体が存在し、それらがさらに未知の力に覆われているのです。
厨二心をくすぐる空間が広がっています。
いつかこれらの謎が紐解かれ、人類が宇宙に進出する時が来れば、全く違った世界観を持ち、人類がさらに一歩進化出来るような気がしてなりません。
機動戦士ガンダムで表現されるニュータイプのように。
そんな時代まで見てみたいものです。
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