- 投資家・個人事業主・医学博士
- 投資歴15年 (学生時代から)
- レバナス/USA360/3倍ETFをメインに積立中
- 地銀→野村證券→ネット証券
- FIRE済み:好きで働いてます
はじめに
医学博士という肩書きは各種メディアでもしばしば目にすることがあると思いますが、一体どんな肩書きなのかご存知でしょうか。
正しくは医学(博士)という表記になりますが、医学博士が慣例的に馴染みがあると思いますので本稿では医学博士として統一します。
なんとなく医学の権威であるような雰囲気があるので、サプリメントや健康グッズなどで『医学博士監修』なんて書いてあるとついつい信用してしまう人もいるかもしれません。
しかし一方で、医師との違いや普段は何をやっている人なのか疑問に思う方も少なくないようです。
そこで本稿では、医学博士である筆者がその実態を解説します。儲かるのか、仕事は何をしているのか、どうやったらなれるのか、様々な疑問にお答えします。
この記事のターゲット
- 医学博士の収入/年収が気になる人
- 医学博士になってみようと考えている人
- そもそも医学博士って何者?と訝しんでいる人
医学博士の実態
日本にはどれくらいいるの?
日本ではバブル崩壊後に取得者が増加し、下の表にあるように毎年数千人が取得しています。
このデータは科学技術・学術政策研究所HPで誰でも見ることが出来、科学技術指標2021の統計集から抜粋したものです(赤線は私が引きました、“保険”の中には医学博士、薬学博士、歯学博士、保健学博士が含まれます)。
1981年以降徐々に取得者が増え、1990年以降は年間概ね6,000人前後で推移しています。
医学博士のみの統計ではありませんので、医学博士の人数はこれよりも少なくなります。
海外に比べて人口当たりの博士号取得者数が少ないのが日本の特徴です。
絶対数としてもそれほど多くはない印象ですね。
皆さんの職場が医療と関係があったとしても、一部の研究職にしかいないような存在でしょう。
大学の教員であればほぼ全ての方が博士号を持たれていますが、一方で医師であっても博士号を有していない方も大勢いらっしゃいます。
医師国家資格の合格者は年間1万人前後ですので、仮に上の表の『保険』の欄の半数が医学だと仮定しても、医師のうちの三分の一に満たない人数です。
私のように医師ではない医学博士の人数もある程度いますので、それは容易に想像がつくと思います。
ぶっちゃけ儲かるの?
場合による、という答えが正しいでしょう。
ここでは医師免許を持たない医学博士にフォーカスしてお話しします。
医学博士の取得有無が大学等における出世に影響するのは確かですが、医師免許を持つ場合には医師としての収入分析になることから、職業ではなく肩書きに焦点を当てた本稿の内容から外れるためです。
さて医学と名の付く博士ですから余程の高給取りに思われるかもしれません。
しかし、その実ピンキリです。
もしかしたらNHKで2021年に放送されたドラマ『白い濁流』をご覧になった方もいるかもしれませんが、そこに描かれる若手のポスドク(博士号を取得した後、大学の研究室で研究に勤しむ非正規雇用)の薄給ぶりに驚かれたかもしれません。
しかし、それは事実です。
年収300万円代で研究に精を出している医学博士(ポスドク)も決して珍しいことではありません。
一方で、年収数千万円という医学博士もいます。
同ドラマでも描かれたように、大学研究者から製薬企業の研究職に転身することで大幅に年収を上げることが出来るというケースも確かに存在しています。
そうでなくとも功績を挙げてポスドクから教員(助教→准教授→教授)として活躍するようになれば、1,000万円には手が届くこともあります。
それでも30代、40代での年収1000万円達成の可能性は高くなく(教授になれる年齢が40代後半以降が多いため)、恐らく読者の皆さんの想像していたほどは稼げない、というのが実態ではないかと思います。
取得するまでにはそれ相応のコストと時間を要する肩書きですので、特に日本における費用対効果をどう見るかはそれぞれではないかと思います。
ただし、次の項で触れるように圧倒的に稼ぐ方法もあります。
私の経験を踏まえつつ、希望を持って博士課程を取ろうと思える人材に増えてもらいたいという願いを込めてお話しします。
どうやったら稼げるようになる?
夢のない話が続きましたが、では一攫千金は無理なのでしょうか。
いえ、医学博士ならではの活路がありますのでそれをお伝えします。
ここまで紹介してきてお分り頂けたと思いますが、医学博士というものは単なる肩書きであって職業ではありません。
従って、医学博士の仕事、という決まったものは無いのです。
その代わり、稼ぐためにはどうすればいいのか、明らかな戦略があるのです。
重要にも関わらず日本人に決定的に不足しているマインド、特許、起業、投資です。
医学博士になるということは、以下に詳述しますが医学の特定の分野の研究に精通し、世界で自分だけの発見を成したことを証明しています。
その際に、あるいはその学びを活かして実際の医療にフィードバックすることを前提にしたプロジェクト構築をすることが金銭的な成功のためには極めて重要です。
なぜなら、その研究成果を知財化(特許出願)し、新薬の候補あるいは新薬の開発プロセスに大きく貢献する技術として育てることが必要だからです。
それが出来れば、その特許を導出(企業にライセンスアウト)したり、自身で起業することも可能になります。
ちょっとしたビジネスを思いついたので起業、というのとは訳が違います。
というのも、ビジネスとして育て上げる素地が業界として整備されているからです。
最初からターゲット(患者/疾患)が明確ですので市場は確保されており、出口は医薬品・医療機器になります。
いや待って、そんなことが出来るなら製薬企業も困らないよ、皆んな大金持ちだよ、、、
という声が聞こえてきそうです。
そのご指摘はごもっともです。
しかしそう出来ないのには明確な理由があると私は考えています。
研究成果を発明と捉え、ビジネスに結び付ける慣習が全くと言っていいほど欠落した日本の大学は、折角の素晴らしい成果を活用出来ていないのです。
日本生物工学会誌第97巻第1号によれば、以下の表の通り日米の大学のライセンス収入の圧倒的な差が浮き彫りになっています。
これは日本の大学の研究力の低下も一因ではあるものの、圧倒的に知財戦略の欠如によるものと感じます。
その規模の差は実に100倍です。
私自身、大学内の研究者とのディスカッションで本当に痛感します。
私はこれまでに20代後半から30代後半までの約10年間で25件の特許を出願し、その6割は本稿執筆時点で既に成立しています。
しかし私以上に研究成果を挙げている多くの先生方は成果を惜しげも無く学会で公表し、論文を出し、業績を積み上げていく一方で、全く出願をしません。
研究成果の公表が大学教員の責務ということはよく分かりますが、その前に出願しておかなければ、どんなに素晴らしい成果でも製薬企業に渡すことが出来ません。
特許で保護されていなければ商売にならないからです。
そうなると患者に還元されることもなく、お金にもなりません。
ただ多くの論文が業績集に並び、しかしそれらの成果は臨床で応用されることなく埋もれていくのです。
どんなにバズったツイートもやがて忘れ去られるように、一流論文に掲載された業績も役に立つ日は訪れません。
しかし戦略的に研究テーマを定めて着実に知財化をして導出すれば、薬に出来る芽が出来ます。
仮に薬になるまで行かなくてもライセンス契約料は入り、大学も研究者も潤うのです。
国が交付する競争的研究資金などとは比べ物にならない金額の研究費が手に入り、大学の給料とは比べ物にならない収入を得ることが出来るのです。
さらに、そうして一財を成した研究者は次なる起業やスタートアップベンチャーへの出資を通じてさらに資産を増やしていくのです。
これがゴールドスタンダードと言えるでしょう。
米国ではそうしたベンチャーの起業は大変な数に及び、たとえ開発に失敗しても立ち直れるだけの十分な余力を蓄えて、次から次へとチャレンジをしていくのです。
そこに投資をするベンチャーキャピタルも日本とは桁違いの規模を持ち、失敗を過度に恐れず“100投資して99が失敗しても残りの1が1000になれば勝ち”という精神を感じます。
その精神は残念ながら今の日本には全くありません。
本稿を目にした方の中からそのような起業する、投資する方が1人でも生まれてくれれば幸いです。
どうやったらなれるの?
では、どうやったら医学博士になれるでしょうか。
何も医学博士でなくとも上述のような稼ぎ方は出来ますが、重要なのは研究成果として『世界で自分だけが知っていること』を手にすることであり、それこそが博士号取得の真髄でもあります。
博士号を取るためには大学院に在籍して一定の単位を収める必要がありますが、その中でも必須なのが原著論文の作成です。
特定の分野で、あるテーマについての研究を原則として4年間行い、それがまだ世界で一度も報告されていない内容である場合には論文として発表することが出来ます。
高校卒業からストレートで進学して、28歳で取得が可能になります(成果次第では一部修業年限の短縮も可能)。
盗用、剽窃などは厳に禁じられており、論文掲載に当たっては専門家らによる査読を受け、そうして出版された時点で世界初の報告になるのです。
この過程を踏まなければ医学博士になることは出来ず、つまり研究の訓練を受けることが出来ることこそが博士号取得の最大の意味であると私は思います。
その経験を活かし、ビジネスに繋げることが出来て初めて“稼げる医学博士”となれるのです。
私はそこまで考えて学生時代に大学院を選んだわけではありませんでした。
ただ、将来医療に応用出来る分野には進みたいと明確に考えていましたので頑張ることが出来ました。
当時の私のモットーは『物理学がお金になったのは20世紀、これからは医学・生物学だ』というものでした。
私自身の経験は以下の記事に簡単に記載していますので、もしご興味があればご一読下さい。
終わりに
医学博士の実態について、概略と私の思いを綴ってきました。
最も伝えたいことは、稼ぎたいなら先ず行動力を磨いてほしい、ということです。
医学博士は職業ではありません。
しかしその取得過程で大きく稼ぐ力を鍛えられているのですから、それを活かせる場に身を置いて活躍出来るように、世の中をビジネス目線で見て欲しいということです。
製薬企業もボランティアではありません。
営利企業が臨床開発を行うにはその先に“儲け話”がなければいけないのです。
ただしこれは“稼ぎたいのであれば”ということです。
純粋に研究が好きで、お金はなくても研究出来ていればそれで良い、という人は構いません。
ただ、その場合には豊かな老後などとは縁遠く、いくら業績を積んでも何の役にも立てないという可能性があることは肝に命じておかなければならないでしょう。
そんな時は投資をすることで効率よく資産形成を行うことが必須と考えます。
投資は気が重いという方は、そんな方向けにガイドをしていますので、以下から是非初めてみてください。
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