そんな期待の声も一部では聞こえます。
投資信託にもETFにもエネルギー関連企業に集中投資する、いわゆるテーマ型の商品が存在します。
全世界株式やS&P500、NASDAQ100などと比べると知名度は低く、またその利用者も多くないですが、それらのインデックスとは異なる値動きをしますのでリスクヘッジと捉えることも出来ます。
また、2020年以降のコロナショックで落ち込んだエネルギー需要の回復期には大きな値上がりも見込め、更にはこれから大きな発展が見込まれる国々での需要も期待されます。
そこでこの記事では、エネルギー関連の米国ETFに焦点を当て、独特の値動きとともにレバレッジで大変なことになったERXを含め、資産形成に使えそうかを紹介します。
- 投資家・個人事業主・医学博士
- 投資歴15年 (学生時代から)
- レバナス/USA360/3倍ETFをメインに積立中
- 地銀→野村證券→ネット証券
- FIRE済み:好きで働いてます
ERX:Direxion デイリー エネルギー株 ブル 2倍 ETF
ERXとは、エネルギー・セレクト・セクター・ インデックスの運用実績(手数料・費用控除前)の、日毎の変動率の2倍に連動する投資成果を目指す、Direxion Shares ETF Trustが運用するETFです。
つまりエネルギー関連銘柄のレバレッジ2倍です。
2020年3月31日まではレバレッジが3倍だったのですが、同4月1日から2倍に変更されました。
構成銘柄は以下の通りです。
構成銘柄 Top10 | 構成比率(%) |
---|---|
エクソンモービル(XOM) | 22.75 |
シェブロン(CVX) | 21.34 |
EOGリソーシズ(EOG) | 4.90 |
コノコフィリップス(COP) | 4.50 |
シュルンベルジェ(SLB) | 4.38 |
パイオニア・ナチュラル・リソーシズ(PXD) | 4.31 |
マラソン・ペトロリアム(MPC) | 4.11 |
フィリップス66(PSX) | 3.31 |
ウイリアムズ・カンパニーズ(WMB) | 3.30 |
キンダー・モルガン(KMI) | 3.23 |
石油関連企業を中心とした構成で、いずれもS&P500に含まれる大型企業です。
そもそもERXが連動するエネルギー・セレクト・セクター・ インデックスはS&P500のエネルギーセクターの成績を把握するために作られた指数です。
Top10だけで7割を超えますが、中でもエクソンモービルとシェブロンが突出しており、これがエネルギー・セレクト・セクター・ インデックスの特徴と言えます。
石油・ガス・消耗燃料関連企業のほか、エネルギー設備・サービスに関連する企業も含まれます。
エネルギーセクターETF:VDE, IXC, XLEとの比較
エネルギー関連でレバレッジをかけた米国ETFはERXだけですが、レバレッジ無しのETFなら『VDE』、『IXC』、『XLE』があります。
- VDE:Vanguard Energy Index Fund ETFは『MSCI USインベスタブル・マーケット・エネルギー・インデックス』に連動するETFで、エネルギーセクターの米国企業(大型〜小型)で構成されます。
- IXC:iShares Global Energy ETFは『S&Pグローバル・エネルギー株価指数』に連動するETFで、
- XLE:Energy Select Sector SPDR Fundは『エナジー・セレクト・セクター・インデックス』に連動するETFで、こちらもエネルギーセクターですが大型株(SP500から選定)で構成されます。
ERXを含めた各ETFの特徴を並べてみると、以下のようになります。
比較項目 | ERX | VDE | IXC | XLE |
---|---|---|---|---|
運用会社 | Direxion | バンガード | ブラックロック | ステートストリート |
設定日 | 2008.11.6 | 2004.9.29 | 2001.11.16 | 1998.12.22 |
経費率 | 0.95% | 0.10% | 0.43% | 0.10% |
資産総額 | 7.14億ドル | 84.4億ドル | 22.9億ドル | 370億ドル |
レバレッジ | 2 | 1 | 1 | 1 |
5年トータルリターン | -27.47% | 7.17% | 7.26% | 7.93% |
直近配当利回り | 2.56% | 3.04% | 3.69% | 3.65% |
対象銘柄数 | 20程度 | 100程度 | 50程度 | 20程度 (SP500より) |
一際目を惹くのが、ERXの5年リターンがマイナスということでしょうか。
これらETFの過去の価額推移を見てみましょう。
とんでもない形になっています。
2020年2月から3月にかけて、ERXが凄まじい落ち込みを見せています。
コロナショックの底に当たるこの時期、エネルギー関連株には非常に強い下落要因がありました。
その大暴落のあった2020年3月31日までレバレッジが3倍だったERXはその影響をモロに受け、実に最大下落幅マイナス99.31%というとんでもない下落を経験したのです。
これほどの影響はNASDAQ100でもS&P500でも見られませんでした。
そうでなくても2015年からの5年間は株価が長期的に横ばいのため、逓減が見られています。
コロナショック前後を拡大し、S&P500に3倍のレバレッジをかけたSPXLと比較してみると以下の通りです。
SPXLは全期間でレバレッジ3倍です。
ERXは正に最悪のタイミングでレバレッジ倍率の変更を行っており、目も当てられない状況になっています。
レバレッジ変更もさることながら、特定のセクターに集中投資することのリスクをまざまざと見せつけられました。
レバレッジのかかっていないVDE、IXC、XLEについてはERXほど悲惨なものでは無いものの、コロナショック後2020年一杯はやはり不調が続きました。
コロナショックがとても目立つので目が行ってしまいますが、実はその10年以上前から振るわない成績が続いていることにも注目です。
レバレッジをかけるに値しないセクターである、と言われても仕方のない成績です。
2021年以降はNASDAQ100よりも好成績
長期的な成績を見ると振るわないERXですが、よく見ると実は2021年以降はとても好調なことが分かります。
NASDAQ100に2倍のレバレッジをかけたETF『QLD』と比較してみても、その差は明らかです。
コロナ禍は沈静化には程遠いものの、各国で移動規制などが緩和されてきた2021年以降、徐々にエネルギー需要が回復してきたことによります。
加えて2022年に入るとロシア・ウクライナ戦争の勃発によるインフレ加速など、NASDAQ100には逆風となるイベントが発生するものの、インフレに強いだけでなく原油高も発生し、ERXはどんどん上昇していきました。
コロナショックの底でERXを仕込んだ方は歓喜されていることでしょう。
一方で、長期的に投資をされてきた方にとってはレバレッジ3倍で受けたダメージをレバレッジ2倍で取り戻すことに対する絶望感を抱いているかもしれません。
ERXが2014年に付けた高値水準にまで戻すには、2022年3月時点からおよそ20倍の値上がりを期待しなければなりません。
再生可能エネルギーの台頭は確かに待ち望まれるものの、新興国の発展による世界的な原油・ガス需要は今後も増えていくでしょうから、長期的には上昇が見込めるのでは無いかとは思います。
しかし20倍の上昇にどれだけの時間が掛かるのか、途中でまた逓減が襲ってくる可能性もある中、厳しいと言わざるを得ないでしょう。
ERXは長期投資に向いているか
しかし既にVDEなどのレバレッジ無しのETFはコロナショック前の横ばい水準にまで戻しており、ここから右肩上がりで勢いよく上昇していくようには思えません。
もちろん、その行く末は誰にも予想出来ませんから、エネルギー需要の拡大に期待して投資を続けることの選択肢の一つでしょう。
ただ、このように特定のセクターに偏った金融商品の利用は、セクターを跨いで分散投資が可能な金融商品よりも慎重になるべきだと思います。
その時々の値動きに惑わされず、常に正しい情報を収集し、投資判断を行うようにしましょう。
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