結論としては、どこまで上がるか分かりません。
ただこの記事で伝えたいことは、テスラはPERなどの指標だけでは測れない企業である、ということです。
世界最大規模となった自動車メーカー、イーロン・マスク氏が率いる電気自動車メーカーとして知られるNASDAQ100の一角です。
実際は電気自動車事業のみを手がけている訳ではない上に、またただ単に脱炭素のために電気自動車を先駆けて作っているだけでも無いのですが、便宜的にあるいは一般的には電気自動車メーカーとして名が通っています。
2019年から急激に株価が高騰し、イーロン・マスク氏の言動と合わせて投資家の間ではしばしば話題に登る会社でもあります。
あまりの高騰ぶりにバブルの懸念を持たれ、本当にこの会社にそれほどの(時価総額でトヨタを上回るほどの)価値があるのだろうか、と疑問が投げかけられました。
テスラの大株主(20%以上保有)でもあるイーロン・マスク氏はテスラの株価動向によって世界一の富豪ともなり、少なからず妬みの対象にもなったことでしょう。
アンチも少なく無い同氏への反発は、株価が高過ぎるという議論には少なからずそうした背景もあるように思います。
そこでこの記事では、テスラの株価の推移を改めて見直し、
・実体を伴わないバブル的高騰なのか、
・投資家は何を期待してテスラ株を買っているのか、
を解説します。
テスラのことをただの電気自動車メーカーと思っていると、この一社への投資を代表的な例として、世界の潮流について行けなくなる恐れがあると私は思います。
- 投資家・個人事業主・医学博士
- 投資歴15年 (学生時代から)
- レバナス/USA360/3倍ETFをメインに積立中
- 地銀→野村證券→ネット証券
- FIRE済み:好きで働いてます
テスラの株価推移
テスラは2010年に上場し、2019年に大暴騰を起こしました。
以下のチャートは、代表的なインデックスおよびそのレバレッジETFとの比較です。
NASDAQ100に3倍のレバレッジをかけたTQQQをも上回る上昇は凄まじく、これがテスラCEOであり大株主でもあるイーロン・マスク氏を世界一の富豪たらしめました。
特に上昇ペースが加速した2019年以降を切り取ってみると、そのすごさが良く分かります。
TQQQすら地を這うチャートに見える、驚きの暴騰ぶりです。
テスラ社の時価総額は自動車業界の各社を圧倒し、トヨタどころかそれにフォルクスワーゲンやBMW、GMやフォードの時価総額を足し合わせてもまだテスラが上です。
2021年には時価総額が100兆円を超えました。
マイクロソフトの半分にまで迫る勢いです。
テスラって、電気自動車メーカーの一つでしょ?なんでこんなに凄いの?
と思う方も少なく無いのではないでしょうか。
PERなどの指標だけで見れば完全なバブル、圧倒的な割高にも関わらず、なぜここまで上昇するのでしょうか。
- イーロン・マスク氏の口が上手いから?
- 電気自動車ブームに火を付け、世界がそれに追随したから?
- 販売台数の増加が堅調だから?
どこをどう見てもバブルはバブル、と映るかもしれませんね。
それを完全に否定することはもちろん出来ませんが、テスラという会社にそれだけの価値がある可能性を思わせるだけの情報もまたあります。
ここからは、テスラがどんな会社で、なぜこれほどの企業価値があると思われているのかを紹介します。
テスラとは
Wikipediaを見ると、冒頭に以下のように説明されています。
アメリカの電動輸送機器およびクリーンエネルギー関連企業である。テスラ社の現在の製品には、電気自動車、家庭用からグリッドスケールまでのバッテリー電動輸送機器、ソーラーパネル、ソーラールーフタイル、およびその他の関連製品とサービスが含まれる。
Wikipedia テスラより
CEOのイーロン・マスク氏が率いる、地球の将来を左右する技術革新を手掛ける企業群の中の一つです。
宇宙開発を手掛けるスペースXや、火星への基地開発や移住計画の推進、PayPalの前身である電子決済の先駆けX.comなど、同氏が掲げるプロジェクトはことごとく世界の潮流の最先端になっています。
テスラ社の説明にもある通り、そもそも電気自動車メーカーという位置づけでは無いことに留意しましょう。
電気自動車は事業の一つに過ぎない、ということです。
例えば2022年に完成するとされるロボット事業も行っていて、孫正義氏もそれに触れ、スマートロボット事業への本格的な投資を計画しているようです。
要するにテスラは、次世代の産業を牛耳る事業を中核に、私たちが先々恩恵を受けることになる最先端開発を担っていると言えるでしょう。
当然、まだ公表されていない計画も多いでしょうから、その期待感は非常に大きなものです。
その期待が加熱しすぎで株価がバブルになっているのかどうかは、現状の売上規模や会社規模などから正しく測ることは難しいでしょう。
しかし、ここで匙を投げてしまっては面白く無いので、テスラ社のことを少し詳しく知ってみましょう。
少しはその価値が見えてきます。
テスラのもたらす価値とは
分かりやすい分野である電気自動車の周辺に焦点を当て、テスラがどれほどのものなのか見ておきましょう。
そのためには私たちの生活にどれだけ役に立ってくれるのか、という視点が分かり易いと思います。
日本でテスラが普及していない現状も勘案して紹介します。
日本の電気自動車を取り巻く環境
ちょっと寒くなったら電力需給が逼迫し、他地域からの電力融通の話が出る日本。
発電は化石燃料に依存し、技術的にまだ人類の完全コントロール下に置けない原発を避けるのは良く分かるものの、再生可能エネルギーの研究開発とインフラ整備の遅れはもはや怠慢とも言える後進国、日本。
こんなことでは日本でガソリン車が電気自動車になるなんて、夢のまた夢です。。。
しかし電力確保とインフラ整備が米国でも課題になることなどは、イーロン・マスク氏も百も承知。
いつからその構想を持っていたのか知りませんが、トータル的に解決する手段を並行して創ってきています。
- 住宅太陽電池パネル:
ソーラーシティ社(テスラが買収)が家庭での充電量を賄うために整備を進める、屋根に取り付けるソーラーパネル事業。電力網を引かなくても一日80km程度を走行可能な電力を各家庭で作り出す。
- ソーラールーフ:
その名の通り屋根そのものがソーラーパネルになる構造物。耐久性も高く、デザイン性も高い発電システム。
- パワーウォール:
家庭用のリチウム蓄電池。容量も充放電効率も大きく、最大で10台を接続可能。
- パワーパック:
企業や電力会社向けの蓄電池。太陽光発電との組み合わせで燃料費を不要にする画策で、ガソリン以上に安定したエネルギー供給を可能にする。
- スーパーチャージャー:
急速充電器。20分でモデルSのバッテリーの50%の充電が可能。日本でも2018年に京都に設置された実績がある。現在は改良が進み、モデル3なら5分の充電で120kmの走行が可能に。
- ウォールコネクター:
自宅やオフィスでの充電用。ホテルやレストラン、駐車場、ショッピングセンター、リゾートなどと提携し、ちょっとした時間にも充電が可能に。
- 公共充電設備の利用:
専用アダプターを使うことで、コンセントからの充電が可能に。
一方の日本はどうでしょうか。。。
満充電での航続可能距離はようやく400kmに到達したレベルです。
日産公式HPより
テスラ モデル3は689km、モデルSでも652kmです。
テスラ公式HPより
30分で80%以上の急速充電が行えるスーパーチャージャーの存在は大きいです。
日本でそのインフラ整備が進むことを期待はしたいですが、遅々として進まないのでしょうね。
日本の自動車産業の未来
発展途上国が何十年も前の車をボロボロの状態で使っている光景を見たことがあるのでは無いでしょうか。
日本は間も無くあの状態になります。
なぜなら欧州は2035年以降はガソリン車の新車販売が禁止されており、それに先駆けて新車開発は電気自動車にシフトするからです。
つまり、メルセデスもBMWもアウディもボルボもアルファロメオもフォルクスワーゲンも、ポルシェもアストンマーチンもフェラーリもランボルギーニも、ロールスロイスもベントレーも販売する新車は電気自動車になります。
その新車を買おうとすれば電気自動車しか選択肢がなくなるのです。
世界が買ってくれない車を日本メーカーも力を入れて開発し続けることはしないでしょう。
トヨタもホンダも日産も電気自動車に本腰を入れているのは明らかです。
しかしインフラ整備が追いつかなければ充電も満足に出来ず、日本はこのままだと結局はガソリン車に頼らざるを得ません。
世界から見れば、『日本は電気が不足していて、相変わらず排気ガスを出す昔の車が走っている後進国』に見えるわけです。
経済的には既に一人負けの状態の日本ですから、容易に想像が出来ます。
結局テスラの株価は高いのか安いのか
分かりません。
ここまで来てそれか、と思うかもしれませんが、なので記事の始めにも書いておきました。
今、テスラの株価が割高か割安か、断言できるのは未来人だけです。
それはどの銘柄も一緒、と言えばそうなのですが、テスラがここまで成長してきた背景にあるイーロン・マスク氏の思想(先見の明か企みか)が今後の人類の技術発展に大きな影響をもたらすことは間違い無いのではと感じます。
単に性能の良い電気自動車を作るとか、とりあえずロケットを飛ばすとか、それだけでは無い価値があると感じます。
私が感じているように、多くの投資家が感じるので株価が上がっているのでしょう。
これだけ持ち上げておいて私はテスラの株を1株たりとも持ったことは無いのですが、期待してその成長を見ているのは中々に楽しいものです。
(私は個人的に資産形成はインデックス投資のみ、と少なくとも本稿執筆時点では決めているので)
テスラに限らず企業価値を見定めることは内部の人間であってさえ難しいというのは、スタートアップ投資の経験のある私は身にしみて理解しているつもりです。
その中でもとりわけ難しいのがこのテスラだと思います。
テスラに期待する方も、投資するのであればそれを内包するNASDAQ100への投資を個人的にはお勧めします。
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